ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No1

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概要

日本結晶学会誌Vol60No1

富岡尚敬図4clockwisedistortion+?++ +anticlockwisedistortion+?ツイード構造の模式図.(Schematic diagram of tweedstructure in majorite.)6配位サイトで陽イオン秩序化が起きると,収縮により正方晶相のc軸となる立方晶相のa軸がランダムに選択され,時計回りと反時計周りの回転歪が生じる.その結果,<101>方向の変調波が直交する微細組織が形成される.秩序化の進行でこの変調波の振幅が増加すると{101}双晶に発達する.(a)Twin domain(b)acPseudomerohedral twinTwin plane(101)acTwin domainMerohedral twinacca制約により,双晶界面は粒界に向かって直線的に伸び,ラメラ状の形態をとる傾向がある(図5a).このような双晶では,結晶格子と双晶格子が近似的に一致し,擬メロへドラル双晶(pseudomerohedral twin)と呼ばれる.12)空間群I4 1/aの対称性では,Ia3dがもつ{110}面上の映進面も失われている.a 1とa 2軸の長さは同じであるため,{110}双晶ドメインの角には格子のミスフィットは生じない.その結果,双晶ドメインの界面は不規則に湾曲することが可能である(図3d,5b).このような双晶では,結晶格子と双晶格子が完全に一致し,メロへドラル双晶(merohedral twin)と呼ばれる.12)双晶の形成には,変形・成長・相転移という3つのメカニズムが挙げられる.川井型マルチアンビル装置によるメージャライトの合成においては,圧力媒体を用いた準静水圧的な環境に試料が保持され,また,約2,000℃という非常に高い温度により,差応力が緩和されやすい.したがって,変形は双晶形成の原因としては考えにくい.われわれがTEM観察したメージャライト粒子中には,擬メロへドラル双晶のドメインが直交する組織も観察されている(図3b-c).前述のとおり,ドメインの角では結晶格子に大きなミスフィットが生じる.結晶成長時にこのミスフィットを解消するためには,欠陥(転位)を導入する必要がある.しかし,メージャライトの{101}双晶ドメインの交差位置付近には,転位はいっさい確認できなかった.その一方で,ラメラ状ドメインの先端がニードル状になったり,界面が波打つように湾曲する様子が観察された(図3c).つまり,結晶格子は弾性的に歪むことでミスフィットを解消しているのである(図6).同様の擬メロへドラル双晶の組織は,白榴石(leucite:(a)(b)(c)(d)a 2a 1a 2a 1Twin plane(110)Twin domainTwin domain図5双晶形態の模式図Schematic.(diagrams of merohedraland pseudomerohedral twins in majorite.)(a){101}擬メロへドラル双晶.双晶ドメインの界面をまたいだ結晶格子(白丸,黒丸は,それぞれ双晶ドメインI,IIの格子点を示す)は完全には一致しないため(結晶格子≒双晶格子),界面の交差位置の近傍にミスフィットが生じる.(b){110}メロへドラル双晶.双晶ドメインI,IIの結晶格子同士は完全に重なるため(結晶格子=双晶格子),ミスフィットはゼロである.Right-angled twinNeedletwin図6擬メロへドラル双晶界面の弾性変形.(Elasticdeformationofdomainwallsofpseudomerohedraltwin.)(文献13)を改変).(a)等価な双晶界面同士が直交(right-angled twin).相転移で形成された擬メロへドラル双晶ドメインの角(矢印)では,結晶格子が弾性的に歪んでミスフィットを解消する.(b?d)ニードル状の双晶ドメインの形成.双晶ドメインが淘汰される過程では,向かい合うドメインの角が互いに引き合うことで,先端がニードル状に変形する.ニードルのごく近傍にある界面も,弾性歪により波状にたわむ.4日本結晶学会誌第60巻第1号(2018)