ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

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概要

日本結晶学会誌Vol59No5

熊本明仁,柴田直哉,藤平哲也,幾原雄一図3Al合金/AlN界面の原子分解能STEM-EDSマッピング. 11)(Atom-resolved STEM-EDS mapping of the Al alloy/AlNinterface.)左から構造モデル,ABF像および同時取得したAl,N,Mg,OおよびSiのSTEM-EDS元素マップ.カラーバーは,k因子を乗じたX線カウント.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.合金(上方)に向かってLe-Me-Leの3原子層の構造を形成している.この配列は岩塩型構造に見られるMeLe 6八面体の原子配置に類似している.第2層(2 nd)では,LeとMeによる傾斜したダンベル構造が確認されるが,下方のLeとの配置関係からMeLe 4四面体配置に相当すると考えられる.このような配置は,AlN側のAlN 4四面体構造を極性反転した構造に類似している.一方で第3層(3 rd)は,HAADFとABFの双方で原子カラムの強度の差が小さいことから,Me原子カラムで構成されていると考えられる.しかしこの試料には,Alの原子番号(ZAl図2Al合金/AlN界面のSTEM像.(STEMimagesofAlalloy/AlN interface.)(a)ABF像および(b)界面構造モデルと平均処理したHAADF/ABF像.とがわかった.さらに面内方向の原子カラム周期がAlNバルク構造のそれと一致したコヒーレントな界面遷移構造を示す.この界面部分のABF像および同時取得したHAADF像を平均化し,拡大して示したのが図2bである.金属(Me)原子カラムが明瞭なHAADF像と,軽元素(Le)原子カラムが明瞭なABF像とを比較すると,この界面は3つの層状構造から形成されていると考えることができる.まず,第1層(1 st)はAlN側(下方)からAl=13)と隣り合わせにあるMg(Z Mg=12)およびSi(Z Si=14)の複数の添加元素が含まれており,HAADFおよびABF STEM像のみでは,原子サイトごとの元素を特定することは困難である.そこで,この界面に対して原子分解能STEM-EDSマッピングを行った結果を図3に示す.各元素マップには,カラーバーがつけられているが,そのスケールはX線カウントにEDS定量解析で用いられるk因子を用い,原子数に関連する値として示している. 14)*1原子分解能STEM-EDSマッピングでは,Si以外のすべての元素マップから原子カラム状のコントラストが得られた.界面構造においては,まず,第2層および第3層のMe原子カラムはAl原子カラムであることがわかった.また界面には,Mg,SiおよびOが特定の原子位置に濃化していることが明らかとなった.まず,Mg原子カラムは,界面の第1層中心の1原子層にだけ偏析しており,O原子カラ*1軸上照射の原子分解能STEM-EDSマッピングでは,電子線チャネリングの効果を積極的に利用してX線強度を稼いでいるため,定量評価には大きな誤差が含まれることに注意が必要である. 15)例えば,AlN[1120]から得られたEDSマップでは,k因子補正後もAlN中のAlカラム強度がNカラム強度よりも高くなっている.248日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)