ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

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概要

日本結晶学会誌Vol59No5

希土類化合物における格子振動の電子状態への影響-充填スクッテルダイトのフォノン物性-表2充填スクッテルダイト化合物ROs 4Sb 12の基底状態と電子比熱係数.(Electronic ground states andelectronic specific heat coefficient in filled skutteruditesROs 4Sb 12.)化合物基底状態電子比熱係数(mJ/mol K 2)参考文献LaOs 4Sb 12超伝導36-5631, 32CeOs 4Sb 12反強磁性92-18033, 34, 42PrOs 4Sb 12超伝導310-75035-37NdOs 4Sb 12強磁性52038SmOs 4Sb 12強磁性820-88039, 40EuOs 4Sb 12強磁性13541図4 X線非弾性散乱で得られたROs 4Sb 12における縦波3.3充填スクッテルダイトにおける低エネルギー・ゲ方向のH点(H(L)および横波方向のN点(N(T)スト・モードの電子物性とのかかわりのゲスト・モードの希土類依存性およびX線回折によって得られたゲスト原子サイトのアイン充填スクッテルダイト化合物においてはf電子をもシュタイン温度の希土類依存性. 23)(Rare-earthたないLa化合物でも伝導電子の有効質量の指標となるdependence of guest mode energies at longitudinal H電子比熱係数が比較的大きいことが知られている. 21-31)(H(L)points and transverse N(N(T)points and表2に各ROs 4Sb 12化合物の基底状態と電子比熱係数をEinstein temperatures at guest atomic site.)示す. 31-41)ROs 4Sb 12化合物では,f電子を有するすべての化合物において電子比熱係数が100 mJ/mol K 2を超えてる.前述のフォノン分散同様に非充填のIrSb 3のスペクいる.LaOs 4Sb 12で50 mJ/mol K 2というLa化合物としてトルとの比較からSbの正20面体構造に内包された希土は大きな電子比熱係数は前述のLa化合物と同様である類原子に由来するゲスト・モードと断定することができが,ここで特筆すべきはEuOs 4Sb 12である.EuOs 4Sb 12のた.その結果,ゲスト・モードの希土類依存性が図4の基底状態はEuの4f電子が7.0μB/EuというEu原子の有ようになることがわかった.する磁気的自由度がほぼすべて基底状態の秩序変数とゲスト・モードのエネルギーは希土類原子の原子番して利用されている. 41)このため,通常の希土類金属間号が大きくなるにつれてLaからNdにかけてはそのエ化合物の重い電子的振舞いが観測される物質群のようネルギーが低下し,SmとEuでは一転してエネルギーのな磁気自由度を用いた伝導電子の有効質量増強として増加が見られる.X線吸収分光を行って,価数自由度をEuOs 4Sb 12の電子比熱係数を理解することが困難である.有するCe,SmおよびEuで行ったところ,Ceは純粋な3そこで,いくつかの理論モデルで提唱されているような価であるのに対して,Smは中間価数,Euは純粋な2価電子・格子相互作用による伝導電子の有効質量の増強であることがわかった.このことからゲスト・モードの効果の可能性が考えられる. 43-45)本研究で観測されたゲエネルギーを決める要因として内包される原子の可動スト・モードのエネルギーと電子比熱係数を比較する限長が重要であることが明らかとなった.このことは,格りでは,報告されている電子比熱係数とゲスト・モード子比熱に関してゲスト・モードのエネルギーをアインのエネルギーとの間に顕わな相関は見出せない.その一21シュタイン温度として導出したMatsuhiraらの結果)や方,電子・格子相互作用と密接にかかわるゲスト・モーYamauraらが行った構造解析から推定したアインシュタドのスペクトルの線幅については定性的に相関があるよ22イン温度)とも定性的に矛盾しない.定量性という観うに見える.すなわち,少なくとも一連のROs 4Sb 12につ点で言えば,構造解析から推定したアインシュタイン温いて,ゲスト・モードのエネルギーについては電子・格度は図4に示すように各ROs 4Sb 12化合物のゲスト・モー子相互作用を通じて伝導電子の有効質量の増強をもたドで最もエネルギーが高い縦波のH点のエネルギーにほらすのに十分低いエネルギーを満たしている.このことぼ等しいことがわかった. 23)さらに,一連のROs 4Sb 12化は,前述の論文でも議論されていることではあるが, 43-45)合物のX線非弾性散乱では,3価の希土類原子を内包すスクッテルダイトのようなカゴ状構造を有する化合物でるROs 4Sb 12では重希土類,特にDyやTbよりも重い原子フォノンを起源とした伝導電子の有効質量増強が起こを内包したROs 4Sb 12において充填スクッテルダイト構る条件として,フォノンのエネルギーがある程度低いこ造が安定な構造ではないことが示唆された. 20)とが必要条件で,そのうえで電子・格子相互作用が必要であるということを実証した結果であると言える.伝導電子の有効質量増強を考えるうえで十分条件と日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)241