ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

ページ
41/84

このページは 日本結晶学会誌Vol59No5 の電子ブックに掲載されている41ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol59No5

中性子を利用したLi 2S-P 2S 5系リチウムイオン伝導体の構造およびイオン伝導経路の可視化図4(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xガラス(x=50,60,70)および7Li 7P 3S 11結晶の構造.(Structures of(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xglasses(x=50, 60, and 70)and 7 Li 7P 3S 11 crystal.)図5(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xガラス(x=50,60,70)および7Li7P3S11結晶の電気伝導度(σRT)および活性化エネルギー(Ea).(The electrical conductivity at roomtemperature,σRT, and the activation energy, E a, for(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-x glasses(x=50, 60, and 70)and7Li 7P 3S 11 crystal.)によってすでに明らかにされていたが, 45),46)このようなσRTおよびEaの振る舞いに対して,その構造学的要因は明らかにされていなかった.そこで,RMCモデリングにより得られた(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xガラス(x=50,60,70)および7 Li 7P 3S 11結晶の三次元構造からLiイオンのみを抽出し,4 A以下のLi-Li相関(l Li-Li)を直線で描いた(図6).7 Li 7P 3S 11結晶の場合,l Li-Li分布からおおむねリチウムイオン伝導経路を予測することが可能である.一方,(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xガラスの場合,xの減少に伴ってl Li-Liの個数も減少し,単純にl Li-Li分布を見るだけではLiイオン伝導経路を予測することができないことがわか日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)図6 Li-Li相関(4 A以下)の分布.(The distribution forLi-Li correlations within 4 A.)る.(7 Li 2S)x(P 2S 5)100-xガラス中に存在する“隠れたイオン伝導経路”を見つけ出すために,再度,解析方法について検討を重ねる必要があった.このとき見出した解析方法が,次に紹介するbond valence sum(BVS)解析を応用したリチウムイオン伝導経路の可視化方法である.3.3 Li 2S-P 2S 5ガラスおよびLi 7P 3S 11結晶のリチウムイオン伝導経路結晶系超イオン伝導体において,Rietveld法や最大エントロピー法(MEM)は,結晶構造やイオン伝導経路を調べるための強力なツールとして広く知られている. 47),48)一方,非晶質系超イオン伝導体の場合,リートベルト法やMEMの利用は難しいため,別の解析手法が求められる.最近,RMCモデリングによって得られた三次元構造情報からBVS解析を応用して非晶質系および結晶系超イオン伝導体中のイオン伝導経路を観察する方法が注目を集めている. 15),49)-53)BVSは,原子間距離(室温)から金属原子の酸化状態(価数)を評価する簡便な方法(経験則)として広く知られている.銅酸化物高温超伝導体YBa 2Cu 3O 7-δのCuの価数評価は最も有名な実用例であり, 54)このほかにもさまざまな酸化物に適用されている. 55)ここで,BVSについて簡単に説明する.BrownとAltermattは,膨大な結晶物質の構造情報を検証することで次の関係を導き出した. 56),57)sij? R0? Rij?= exp??? b ?(3)ここで,s ijは陽イオンiの電荷をそれに配位している陰イオンjに割り当てた結合原子価(bond valence),R ijは233