ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

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概要

日本結晶学会誌Vol59No5

ネスポロマッシモg i{1|000}g- 1 i={1|000},∀3 g i→G{1|000}G -1={1|000}次に2回回転操作を考えてみよう.{1|pqr}{2 001|000}{1|pqr}-1={2 001|2p2q0}{2 001|pqr}{2 001|000}{2 001|pqr}-1={2 001|2p2q0}{2 010|p+?q+?r}{2 001|000}{2 010|p+?q+?r}-1={2 001|2p+1,2q+1,0}{2 100|p+?q+?r}{2 001|000}{2 100|p+?q+?r}-1={2 001|2p+1,2q+1,0}{1|pqr}{2 001|000}{1|pqr}-1={2 001|2p2q0}{m 001|pqr}{2 001|000}{m 001|pqr}-1={2 001|2p2q0}{m 010|p+?q+?r}{2 001|000}{m 010|p+?q+?r}-1={2 001|2p+1,2q+1,0}{m 100|p+?q+?r}{2 001|000}{m 100|p+?q+?r}-1={2 001|2p+1,2q+1,0}上記の結果をまとめると以下の結論が得られる.G({1|000},{2 001|000})G -1=({1|2p,2q,0},{2 001|2p+1,2q+1,0})これらの席対称群は,p,q,zとp+?,q+?,z(p,q整数)を不変(安定)にし,同じワイコフ位置に属する.特に,S(00z)とS(??z)はPbamの共役部分群であるため単位胞内の位置は00zと??zは同一のワイコフ位置に属するが無限個の4e位置の代表に過ぎない.同様にS(?0z)を分析すると以下の結果が得られる.G({1|000},{2 001|?00})G -1=({1|2p+1,2q,0},{2 001|2p,2q+1,0})これらの席対称群はp+?,q,zとp,q+?,z(p,q整数)を不変(安定)にし,同じワイコフ位置に属する.特に,S(?0z)とS(0?z)はPbamの共役部分群であるため単位胞内の位置の?0zと0?zは同一のワイコフ位置に属するが無限個の4f位置の代表に過ぎない.本稿第2章で,「モノ(object)の変換は直接に写像で変換するのに対して,そのモノ(object)の対称性は写像により共役する」と強調した.Pbamの投影をみてみよう.00zと??zという位置は複数のPbamの対称操作で関連付けられている(b?,y,z;ax,?,z;2 1 x,?,z;2 1 ?,y,z).S(00z)とS(??z)はこれらの対称操作で共役される.同様に,?0zと0?zという位置も同じPbamの対称操作で関連付けられ,S(?0z)とS(0?z)はこれらの対称操作で共役される.しかし,00zと?0z位置を関連付けるPbamの対称操作が存在しないためS(00z)とS(?0z)はPbamの共役部分群ではない.その結果,これらの位置は4eと4fという別のワイコフ位置に属する.*3∀という記号は「すべての」という意味を示している.6.正規化群あるモノ(object)(M)にユークリッド写像を適用するとMは変形しないが固定の基底に対する位置・方向は変化する.ユークリッド写像は群(E)を形成し,その群はユークリッド群という.Mの対称操作はユークリッド写像でもあるのでMの対称操作群GはEの部分群である.EのMへの影響は以下のように表現できる.EM=M';GM=M;G'M'=M';G'=EGE -1M'はMに適用したユークリッド写像の結果である.GとG'はそれぞれMとM'の対称操作群であり,Eの共役部分群である.GとG'は同じタイプなのだが,一部の対称要素の位置・方向が異なるため,同じ群ではない.GとG'が一致するならGはEの正規部分群なのだが,Eはすべてのユークリッド写像でできているのでEに対するGの指数は大きくて,正規部分群にならない.しかし,GとEの間に必ず別の群が存在し,その群に対するGは正規部分群である.その群はユークリッド正規化群(Euclideannormalizer)といい,NE(G)と表示されている.上記の関係をNE(G)で書き直してみよう.N E(G)M=M';GM=M;G'M'=M';G'=NE(G)GN E(G)-1=GMとM'が結晶構造の場合,Gはその空間群である.同じ空間群なので結晶構造も同じだがMとM'は同一という訳ではない.しかし,MとM'の相違はただの記述の差に過ぎない.簡単な具体例を挙げてみよう.CsClはPm3m空間群タイプに結晶化する.Csを原点(ワイコフ位置1a)に置くClは???(ワイコフ位置1b)に置ける.CsとClの位置を置換すると構造は同じだが構造の記述は変わる.無限の構造(少なくとも,いくつかの単位胞)を見るとその相違は見えないが1個の単位胞だけ見ると別物に見える.なお,G=Pm3mのユークリッド正規化群N E(G)はIm3m(基底は共通)である.NE(G)をGにおける剰余類を考えると以下の結果が得られる(GはNE(G)の正規部分群なので左剰余類と右剰余類は一致する).Im3m=Pm3m∪t(???)・Pm3mt(???)はPm3mの追加生成元であり,同時にCsとClを置換する写像である.一般化すると,NE(G)におけるGの指数はGに結晶化する構造の等価な記述の数である.例えば,wulfingiteZn(OD 2)はP2 12 12 1に結晶化する.P2 12 12 1のユークリッド正規化群はPmmm(a/2,b/2,c/2)である.NE(G)におけるGの指数は16であるのでwulfingiteの16個の等価な記述ができる.これらは座標は異なるが完全に同じ構造である.220日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)