ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

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概要

日本結晶学会誌Vol59No5

ネスポロマッシモ2.共役元,共役類,共役部分群HがGの正規部分群でない場合は別の部分群(H',H"などとする)と厳密な関係をもっている.その関係は共役(conjugation)といい,相似変換である.直感的に「別の場所で同じことをする」という連想で説明できる.M1とM2は2つのモノ(object)としよう(例えば,結晶構造でもいい).M1とM2をjという等長写像(isometry)で関連付けられているとしよう.jM1=M2;M1=j -1 M2(3)等長写像で関連付けられたM1とM2は同じモノである.しかし,M1とM2の対称操作群は,空間中の方向・位置が異なるから同型ではあるが同じではないことに注意すべきである.M1およびM2の対称操作群はG1とG2とするとその群の相互関係を導くことができる.一般の対称操作をg 1,iとg 2,j(G1のi番目,G2のj番目)とする.g 1,iM1=M1とg 2,jM2=M2が成立することを考慮すると,式(3)を以下のように書き直すことができる.j(g 1,i M1)=g 2,jM2;j(g 1,i(j -1 M2))=g 2,jM2;jg 1,ij -1=g 2,j上記の関係はどのg 1,iとどのg 2,jでも成り立っているためこれらの操作を形成する群(G1とG2)でも成り立っている.jG1j -1=G2(4)(3)および(4)より,モノ(object)は写像によって直接変換されるのに対して,モノ(object)の対称性は写像によって共役されることがわかる.この関係を,図1を用いて具体的に示そう.図1に示される2つの四角形は,2π/15回転で関連付けられている(幾何的要素はその間にある黒丸である).この写像は四角の対称操作ではないが等長操作である.両方の四角の対称操作群は4mmの点群(二次元)であるが点群タイプは同じにもかかわらず点群は異なる.実は,対称要素(鏡映線)の方向が異なるため左の四角の対称操作を右の四角に作用しない(いうまでもなく逆も同様である).左の四角を2π/15回転で右の四角に関連付けられるが,後者の対称性を得るために左の対称性を同じ等長操作で共役しなければならない.次に,対称操作への共役影響を考えてみよう.hiは部分群Hのi番目操作とする.hiをgj(Gのj番目の操作)で共役するとhkを得る.g jh ig- 1 j=h k(5)h kをhiの共役操作と呼び,同じ性質をもつ.例えば,4 1[001]をm[110]で共役すると以下の結果となる(鏡映操作の位数は2なのでm -1[110]はm[110]と一致する.表1の結果を思い出そう).m[110]4 1 m[110]=m[110]m[010]=4 3 .すなわち4 1と4 3は同様な操作(4回回転)であり,互いに共役している.次に,式(5)に特定のg j操作ではく,すべてのGの操作(当然ながら,その一部がHにも属する)を適用すると部分群Hに属する操作h iと共役しているすべての操作の集合を形成することができる.この集合は共役類(conjugateclass)という.常にhk=hiという結果を得るとhiは自己共役(self-conjugate)という.その場合共役類は1個の操作しか含まない.演習問題3 4mmという三次元群の共役類を例示せよ.その結果を利用し,3mの共役類を求めてみよう.演習問題4アーベル群(可換群)の場合は各共役類は1個の元しか含まないことを証明しよう.これまで,共役という関係を理解するために,まずは特定のhと特定のgを利用し,その共役元を導いた.その後,特定のhとすべてのg(Gという群)を利用し,hを含む共役類を導いた.今度はすべてのhとすべてのg(Hという部分群とGという群)の共役関係を考えると,式(5)は以下のようになる.∪i,jg jh ig j- 1=∪kh k→GHG -1=∪kH k(6)図12π/15回転された幾何学図形(上)とその対称操作群(下).点群タイプは4mmだが,左の点群と右の点群は2π/15回転で共役されている.式(6)の右に記載されているH k群は同型群であり(共役は相似変換のため),その対称要素の空間中の位置・方向が異なる.すべてのH kは一致する場合にHはGの正規部分群である.この特別なケースで式(6)は以下のように書き直せる.演習問題の解答はJ-Stageに付録として掲載してあります.212日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)