ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

菊池壮太郎,Hongtao YU図3Scc2上にあるコヒーシン病の原因となる変異の分布図.(Cohesinopathy mutations target conserved residues inScc2.)(A)CdLS患者に見られるScc2の変異が見られるアミノ酸残基のうち,種間で広く保存されている残基を赤,保存されていない残基を黄色で示す.これらの変異はフック上にあるパッチI,IIとハンドル上に局在している.(B)パッチI領域の拡大図.(C)パッチIIの拡大図.(D)CdLS患者に見られるScc2変異体は野生型に比べてScc1との相互作用が大きく低下していた.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.図4Scc2構造の静電ポテンシャルマップ.(Surface drawingof Scc2 colored by the electrostatic potential.)青:正に帯電,赤:負に帯電.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.末端領域がDNA結合に寄与しているのかもしれない.3.3 Pds5はScc2と競合的にScc1と結合するPds5はScc2と同様に,Scc1のN末端領域と相互作用する. 14),15)Pds5はScc1の51-150アミノ酸残基の領域と,Scc2は126-230アミノ酸残基の領域と相互作用し,その相互作用領域は一部(126-150)が重複している(図5A).そこで,筆者らはこの2つのタンパク質が競合的にScc1に結合するのではないかと考え,Pds5とScc2の両方の相互作用領域を含んだScc1断片(51-230)を用いて競合実験を行った.精製したGST-Scc2とScc1(51-230)を混合させ,GSTビーズに吸着させた後に,Pds5を加えることでGST-Scc2に結合するScc1の量の変化を調べた.その結果,加えたPds5の量に反比例して,Scc2と結合するScc1の量が減少した(図5B).このことから,Pds5はScc2と競合的にScc1のN末端領域に結合することが明らかになった.分裂酵母のin vitroでのコヒーシンローディング実験においては,Pds5がScc2によるコヒーシ図5 Pds5とScc2の競合実験.(Pds5 competes with Scc2for Scc1 binding.)(A)Scc1のドメイン図.Pds5はScc1の75-150の領域と,Scc2は126-230の領域とそれぞれ相互作用する.(B)GST-Scc2と35S-Scc1の結合は,Pds5を加える量に反比例して低下した.ンローディングを阻害することが報告されている. 17)今回の競合実験の結果と合わせると,Pds5はScc2と競合的にScc1に結合することで,Scc2のコヒーシンへのアクセスを制御し,Scc2によるコヒーシンのローディングを阻害するのではないかと考えられる.また,このScc2とScc1の相互作用が,コヒーシンローディングのメカニズムに重要な役割をもつことも同時に示唆している.しかし,残念ながら,真菌由来コヒーシンを用いた筆者らの実験系ではin vitroにおけるScc2依存的なコヒーシンローディングを確認できておらず,Scc2によるコヒーシ124日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)