ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

受精にかかわる精子融合因子IZUMO1と卵子受容体JUNOの認識機構の解明abN末端L3W148K150疎水性ポケットL81IZUMO1L1JUNOH157C末端N末端R160W62図3C末端IZUMO1JUNOIZUMO1JUNOヒトIZUMO1-JUNO複合体の構造.(StructureoftheIZUMO1-JUNOcomplex.)(a)ヒトIZUMO1-JUNO複合体の構造.(b)IZUMO1-JUNO複合体の相互作用面に見られる相補的界面.K150N151M75 V77W148 K153Y134 E155H157V156A158R160K161N239V141S162S240S241Y16390°IZUMO1JUNO90°Y147M145G80M83 L81L82 F77P84R87 D67I91L66H65E45W62Y44I48L58K42E234図4ヒトとマウスにおけるIZUMO1-JUNO相互作用面のアミノ酸残基保存性.(Interface residue conservation ofIZUMO1-JUNO among human and mouse)ヒトとマウスで保存されているアミノ酸残基を黒色,保存されていないアミノ酸残基を灰色で示した.W148A変異体のK d値とよく一致する結果であった.また,複数の変異を導入したIZUMO1発現COS-7細胞は,卵母細胞にまったく結合しなくなった.これらのことから,本研究で明らかになったIZUMO1とJUNOの相互作用が精子と卵子の認識に重要であることが示された.IZUMO1-JUNOの相互作用には,種特異性が見られる.例えば,ヒトIZUMO1はハムスターのJUNOとは結合するが,マウスのJUNOとは結合しない.7),10),18)IZUMO1-JUNO相互作用面は,前述のTrp残基を含むような種間で保存性の高いコア領域と保存性の低い周辺領域から構成されていた.コア領域によって共通した結日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)合様式が,周辺領域によって種特異的な結合が達成されているものと考えられる(図4).4.4ほかの論文における構造との比較Aydinらと筆者らの結果はおおむね一致するものであったが,異なる点として,IZUMO1の全体構造が挙げられる.彼らは,IZUMO1が単体ではβヘアピン構造部分で折れ曲がったブーメラン構造をとり,IZUMO1-JUNO複合体においてはIZUMOドメインがJUNO側に20 A倒れて直立した構造をとっていることを示した11)(図5).これはSAXSによる溶液構造でも確認されている.一方筆者らの結果では,IZUMO1の全体構造は単体でも複合体111