ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

大木規央,朴三用4.光遺伝学への展開4.1細胞への応用OaPACは光によってcAMP生成を制御できる利点から,光遺伝学(オプトジェネティクス)1), 13)などへの応用が期待される.また,既存の光遺伝学ツールとして報告されている光依存性のイオンチャネルやイオンポンプとは異なる分子機能の制御ができるメリットも有するタンパク質である.われわれはOaPACをHEK293細胞に発現させ,青色光照射により細胞内のcAMPレベルを制御することを試みた(図4a).実験ではpGloSensor-22Fベクターを用いて,OaPAC遺伝子とホタルイカのルシフェラーゼ遺伝子を共発現させ,cAMP検出プローブであるGlosensorcAMP Assayによりルシフェラーゼの発光を検出することでcAMPを定量し,細胞内cAMPをリアルタイムに可視化・定量化を行った.その結果,OaPAC発現細胞内のcAMP濃度は,光刺激により一過的に上昇し,その後,数分以内に分解されることがわかった(図4a).また,刺激光の強度とパルス間隔の調節により,細胞内cAMP濃度を8時間以上高いレベルに保持できることも確認し,OaPACの光操作ツールとしての実効性を示した.また,既知のPACホモログであるbPACとOaPACとのHEK細胞内における活性強度の比較定量化を行った.図4 OaPACタンパク質の光遺伝学への応用.(Use of OaPAC to generate cAMP in cultured cells for optogenetics.)(a)OaPAC分子をHEK293細胞に発現させ,青色光照射により細胞内のcAMPの制御を行った.細胞に3分ごとに30秒光を照射し,細胞内でのcAMPをリアルタイムに可視化・定量化を行った.(b)OaPAC分子をマウスの海馬の神経細胞に発現させ,神経細胞の軸索の分岐・伸長の光操作を試みた.細胞培養の4日目に青色光を30分照射し,7日目に観察すると,光照射のあるなしで軸索の長さに違いが見られた.軸索の分岐においても差異が見られ,青色光を照射した細胞のほう(青色)が照射なし(赤色)より,神経軸索の分枝数が増加している.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.106日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)