ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

光活性化アデニル酸シクラーゼ合成酵素OaPACの活性化機構解明図3OaPACタンパク質変異体の活性測定と活性機構.(Enzyme assays and proposed photo-activated regulation pathwayofOaPAC.)(a)OaPACタンパク質の構造からBLUFドメイン二量体と既知のBLUF構造(TII0078,黄色で表示)とを重ね合わせて見ると,OaPACのα3へリックスは非常に長く,二量体の構造になっている.(b)変異体によるcAMPの活性測定.(c)OaPACタンパク質と結合しているFMNと水素結合をしているGln48の背部にあるα3ヘリックスのLeu111/Leu115,さらにTyr125,Asn256,Phe197,Asp200のそれぞれの変異体の部分と,黄色い点線の矢印で活性機構経路を示している.(d)OaPACのOpen状態とClosed状態の構造をCα重ね合わせ,1.5 A以上変化しているアミノ酸残基を赤色矢印で表した.BLUFドメインではほとんど差異が見られなかったが,ACドメインのCαの変化が約2 Aほど開いている.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.ンが二量体を形成することで,ACドメインが安定な二量体となり活性を示す.これはPACファミリーの特徴的な構造であると考えられる.3.OaPACの変異体による機構解明OaPAC立体構造の情報から,PACの光刺激によるアデニル酸シクラーゼの活性機構を解明するために変異体を作製し,機能解析を行った.フラビン分子と水素結合をしているGln48の背部にあるα3ヘリックスのLeu111/Leu115(二重置換体),さらにTyr125,Asn256,Phe197,Asp200のそれぞれの変異体によるcAMP活性測定を行った.野生型OaPACと比べ青色光の有無では著しく活性低下が見られた(図3b).OaPAC変異体の活性結果を踏まえて,光によるcAMP合成に重要なアミノ酸残基を特定することができ,OaPAC構造からアデニル酸シクラーゼ活性の光刺激による活性機構経路を推測した(図3c).α3ヘリックスのLeu111とLeu115はお互いのヘ日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)リックスが疎水性相互作用により安定化するのに重要な役割を担っていると考えられる.また,Tyr125とAsn256はそれぞれの側鎖を介してサブユニット間の水素結合を共有していることがわかり,ACドメインに存在しているPhe197とPhe180はπ-π結合を形成しており,活性部位の構造安定化に重要な役割を担っていると考えられる.さらに,Asp200はアデニル酸シクラーゼの活性サイトにおいて触媒となる金属イオン配位結合を形成するために重要なアミノ酸であることも明らかとなった.その光刺激による構造変化は黄色い点線の矢印で示したような活性機構経路となると推測できる(図3c).また,BLUFドメインとACドメインの距離は約48 Aも離れている.これは,おそらく光励起されたフラビン分子によるBLUFドメインの微細な構造変化が分子間のアロステリックコンフォメーションを引き起こし,ACドメインが開閉されることによりcAMP合成反応の活性化が起こっていると考えられる(図3d).105