ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

大木規央,朴三用図2OaPACタンパク質の吸収スペクトルと立体構造.(Overall structural properties and solution absorption spectra ofOaPAC.)(a)OaPACタンパク質のラピッドスキャン分光測定により,FMNの吸収変化をLightからDarkへの吸収スペクトルである.強力スポット光源の白色光を5秒照射した後に100ミリ秒から52秒までの吸収スペクトルを100ミリ秒時間分解能で測定し,442 nmから445 nmにレッドシフト示す.点線の表示はLightとDarkの差スペクトルを表す.(b)OaPACの全体構造で,OaPACの全体構造は,12本のαヘリックスと13本のβシートからなっている.N末端にはフラビン結合BLUFドメインとC末端側にはアデニル酸シクラーゼ(AC)ドメインから合成され,ダンベル型の二量体からなっている.フラビン(FMN)C5原子から,Gln48と水素結合が見られており,Dark状態の構造である.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.BLUFドメイン二量体と既知のBLUF構造(TII0078,黄色で表示)とを重ね合わせて見ると,OaPACのα3へリックスは非常に長く,そのC末端は上部のACドメインにまで達している(図3a).α3へリックスの外側表面には疎水性残基が集中し,その疎水性相互作用により二量体が形成されていた.これは既存のBLUFドメインの構造には見られない,唯一OaPACのみに特徴的な構造である.さらに,構造が未知のPACファミリーのアミノ酸一次配列を比較すると,OaPAC構造のα3ヘリックスと思われるアミノ酸はそれぞれ保存されており,また両親媒性ヘリックスを描くと,PACファミリーにおいて疎水性アミノ酸は二量体を形成する接触面のみに集中している.PACファミリーの構造はα3ヘリックスが各分子同士をささえ,二量体を形成して活性機能を有していると考えられる.2.4 ACドメインOaPACのACドメインは8本のαヘリックスと7本のβシートからなっており,構造既知のアデニル酸シクラーゼ(CyaC)12)のACドメインとほぼ一致している.しかし,今回の構造では金属イオン(Mg 2+),ApCpp分子を加えて結晶化させているにもかかわらず,構造から電子マップを特定するには至らなかった.また,OaPACの溶液状態で,等温滴定型熱量測定(Isothermal Titration Calorimetry;ITC)によるATP分子の結合も見られなかった.ACドメインの構造では基質ATP結合部位と思われる広い領域が存在しており,酵素反応に重要な金属結合にかかわるアミノ酸残基Asp156,Asp200も存在し,cAMP生成反応にかかわっていることが確認された.構造既知のCyaCはBLUFドメインがなく,ACドメインのみもつ酵素でOaPACの基質結合部位を比較すると同じアミノ酸からなっている.また,CyaC分子は二量体で活性機能を有していることが知られており,OaPAC分子も溶液中においては超遠心分析やゲルろ過の結果から二量体を形成しているということが確認され,結晶と溶液の分子状態がよく一致していた.CyaC分子は二量体で安定なタンパク質として活性を示すが,OaPACではBLUFドメイ104日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)