ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No2-3

ページ
49/100

このページは 日本結晶学会誌Vol59No2-3 の電子ブックに掲載されている49ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol59No2-3

タンパク質の電子線三次元結晶構造解析と電荷の精密化ab( 6, -2, 7 ) ( -5, -5, -6 )( 6, -2, 8 )Intensity( 6, -2, 9 )( -5, -5, -7)1/29.0 1/26.4 1/24.2 1/22.3-1/29.0-1/32.3-1/36.3-1/146 -1/73.1 0 -1/73.1 -1/146C* (A -1 )C* (A -1 )C* (A -1 )図7回折パターンの回転シリーズ中(H,K)指数が同じ回折点の強度分布.(Intensity profiles of selected diffractionspots with the same(H and K)indices plotted along the C* axis.)図3はこの回転シリーズの最初のフレームに相当する.(a)(H,K)=(6,-2),(-5,-5)の回折点のフレームごとの強度分布.棒グラフの1つのバーは対応するフレームに相当し,図中の括弧内は(H,K,L)指数を表す.バー中の白い縦線は,隣り合う3つのフレームの強度の二次補完から求めたピークの位置.三次元目の逆格子の長さC*は1/206 A-1.(b)この回転シリーズの回折点の平均強度分布.結晶のモザイク幅を補正したもの.一点鎖線はn=4のラウエ関数.文献10)より改変.図8Ca2+-ATPaseのカルシウム結合部位のクーロンポテンシャルマップ.10)(Coulombpotentialmapsaroundthecalciumbindingsite of Ca 2+ -ATPase. 10))計算には,原子モデルのすべての荷電アミノ酸側鎖に部分電荷を与えた.(a)8~3.4 A分解能の回折点を用いて得られたマップ.800番目のアスパラギン酸(D800)側鎖に相当する部分(図中の網目)が欠失する.また,部分電荷を仮定したモデルからのずれを示すマップでは,908の番目のグルタミン酸(E908)側鎖にプロトン化を示す有意な差(矢印で示した網目)が現れる.(b)5~3.4 A分解能の回折点を用いて得られたマップ.D800の側鎖の部分が現れる.部分電荷を仮定したモデルからの有意な差は見られない.(c)中性のカルシウムの散乱因子をモデルに与えたマップ.カルシウム原子上に濃い色の網目で示す差が現れる.8~3.4 A分解能の回折点を用いて計算.Dはアスパラギン酸,Eはグルタミン酸,2つの球はカルシウムイオンを表す.分子全体の網目(σA-weighted 2|F obs |-|F calc |)の表示レベルは1σ,(a)の矢印で示した網目(σA-weighted |F obs |-|F calc |)は3.5σ,(c)の濃い色の網目(σA-weighted |F obs |-|F calc |)は3.5σの有意水準に相当する.文献10)より改変.る電子線回折パターンの処理には,X線結晶構造解析用の回折点処理プログラムXDS 20)が有用であることを確認している.4.原子モデル構築と荷電情報の取得開発したシステムを,ウサギ筋小胞体Ca 2+ -ATPase 4)と牛肝臓カタラーゼ5)の厚さ150 nm以下のごく薄い三次元結晶の構造解析に適用した.先にX線結晶構造解析から得られた原子モデル4),21)を用いて分子置換法によ日本結晶学会誌第59巻第2・3号(2017)り構造決定した結果,これらのタンパク質のクーロンポテンシャルマップから,機能部位にあるアミノ酸や金属イオンの荷電状態の可視化に成功した(図8,9).筋小胞体Ca 2+ -ATPaseは筋小胞体にある膜タンパク質で,筋収縮の際に放出されるカルシウムイオンを筋小胞体中にATPを消費して回収する能動ポンプとして働く.Ca 2+ -ATPaseの膜内領域にあるカルシウム結合部位は,主に,アスパラギン酸とグルタミン酸の酸性アミノ酸から構成される.負電荷をもつ原子の電子線散乱因子が低分91