ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

ネスポロマッシモ図2第一種と第二種対称操作の違い.(上)対掌性をもたないモノ(object)に第二種対称操作を適用し,その結果に第一種対称操作を適用すれば元のモノ(object)に重ねることが可能である.(下)対掌性をもつモノ(object)に第二種対称操作を適用し,その結果に第一種対称操作を適用すれば元のモノ(object)に重ねることが不可能である.の並進部分を示す.(W,w)と表示する場合が多い.対称操作は等長操作であるので,Wの行列式の絶対値は1となる.行列式が+1の場合は第一種対称操作,-1の場合は第二種対称操作となる.行列式と跡(トレース)は基底に依存しないので「不変値」(invariant values)であり,写像を同定する.三次元空間での対称操作の行列表現を以下のように導くことができる.直交基底のc軸の周りの回転操作を考慮する(図3).(abc)から(a'b'c')の変更は以下のように表現できる(cとc'軸は共通なので2×2と1×1の区分行列となる).?cos?? sin ? 0 ???( a b c)sin?cos ? 0= ( a' b' c')??? 0 0 1 ?上記の行列式はcos 2 ?+sin 2 ?=1となる.これは第一種対称操作の特徴である.跡は2cos?+1であり,?によって跡が変わる(表1,左部分).別の基底を利用すると上記の行列元が変わるが行列式と跡は変わらないのでどの基底を利用しても行列式と跡だけで操作を同定する.第二種対称操作の各行列元に-1をかける(要するに,サインを逆にする)とその行列式は+1となる.すなわち,n _という回反(第二種対称)操作の各行列減に-1をかけるとnという回転(第一種対称)操作に変換することができる.以下の2つの具体例を分析しよう.図3c軸から見た(abc)基底の時計逆回り回転の結果(a'b'c')(cとc'は共通).後者の前者への成分は回転操作の行列を定義する(式(1)).? 1 0 0?? 1 0 0?? 0 1 0 ? ?0 1 0?? ? ? ? ? ? ? ??0 1 0?→?0 1 0?; ? 1 0 0 ?→?1 0 0???0 0 1??? ?0 0 1? ?? ? 0 0 1? ? ?? ?0 0 1?左の例では,xyz→xy _ _zという鏡映操作(m=2)がxyz→x _ yz _という2回回転操作に変換され,鏡映面と回転軸は互いに垂直の関係にある.右の例ではxyz→yx _ zとい_+う4回反操作がxyz→y _ xzという4+回転操作に変更になり(「+」は時計逆回りを意味する),回反軸と回転軸は両方[001]に平行である.上記の導き方で表1の右部分が得られる.表1結晶学的対称操作の不変値(行列式,跡)と位数.第一種__第二_種__操作1234612346位数1234622646行列式11111-1-1-1-1-1跡3-1012-310-1-2演習問題1(x/y/z)という座標から(y/x/z)という座標への写像を式(1)に習って記載せよ.表1を利用し,どの対称操作の表現か同定せよ.演習問題2反転という操作は偶数次元の空間に存在しないことを証明してから表1に相当する二次元空間での不変値を導け.操作の性質と操作の結果を区別する必要がある.あるモノ(object)に特定の第一種操作か特定の第二種操作を行った結果が同じになる場合がある.例えば対掌性をもたないモノ(object)が直方(斜方)基底の(100)面にあるとしよう.そのモノ(object)に0yz面の鏡映操作か00z軸演習問題の解答はJ-Stageに付録として掲載してあります.252日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)