ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

会報政状況の把握や編集幹事の出席による学会誌編集の現状把握を行ったうえで,会誌の将来のあり方について検討するとともに,今後の編集体制についても意見交換を行いました.ここに検討結果を答申いたします.背景と現状日本結晶学会の支出総額に占める会誌出版経費の比率が高いため,以前より会誌の完全電子化が議論されてきた.しかし,会誌出版経費に占める編集経費の割合が低くないため,印刷誌を取りやめても削減効果は限定的であると理解されてきた.法人化後,業務委託費や会議費,会誌出版経費などの削減により財政を速やかに健全化する必要があることが明らかとなり,2015年7月4日評議員会で「会誌の将来のあり方」を検討するWGが会長の諮問により設置され,電子ジャーナルのあり方,編集・印刷経費や適切な総ページ数などを検討することとされた.会誌が学会員の研究活動や結晶学の発展において果たしてきた役割は大きい.WG設置後,正会員費値上げと会誌なし学生会員導入が行われ財政状況の改善がなされたため,WGは,一時的な措置ではない,会誌をよりよくする方向性の中で,結晶学会誌の将来のあり方を検討してきた.ところが,財政事情の改善は緊急を要することが明らかになり,現実的な削減への道筋を示しつつ,早い答申が求められることとなった.印刷誌配布の継続の有無を考えるについては,会告等の配布などの付随的役割も考慮する必要がある.会告等の配布については,現在は電子メールで適時配布することが可能である.また,会長選挙・評議員選挙時の投票用紙などの配布の役割も担っており,完全電子化を選択した場合は経費増として見込む必要がある.年会プログラム配布の役割も担うが,年会のHPで見られるようになっていることから,必ずしも郵送により配布しなくてもよいという意見が増えつつある.なお,会告や年会プログラムは記録に残ることも重要であるため,会誌への掲載は続ける必要がある.学会誌のあり方結晶学会・結晶学会誌は,結晶学的課題に対して新しい手法を提示してきた点で,多くの学会・学会誌の中で異彩を放つ.X線,中性子,電子線などを用いた手法開発と啓蒙活動が求心力となり,過去の特集号を図書館などで熟読して学んだ記憶をもつ学会員も多い.一方,結晶学会誌を取り巻く環境は変化してきている.電子版は最新版も含めて誰でも無償ダウンロード可能であるため,印刷誌を手元に置いておく必要が減りつつある.読者離れが深刻であり学会誌の改革が必要であるが法人化後のマンパワー不足も軽視できないため,編集体制に踏み込んだ検討が必要である.日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)1印刷誌は必要か印刷誌は必要かという問いが繰り返されるが,厳しい財政事情下でも,委員全員が印刷誌を残す意義があるという意見で一致した.印刷誌の教育効果を期待する声が特に大きい.研究室に一冊ある意義は大きいとする意見,電子ジャーナルだけだと読まなくなる傾向が加速する,とする意見があった.2印刷誌と電子ジャーナル,デジタルブック電子ジャーナルはカラーを前提に編集され,付録(動画を含む)を添付できる.学会ホームページを経由してJ-STAGEからpdfをダウンロードでき,会告などや年会の要旨集も掲載されている.学会ホームページからはデジタルブックも利用できる.pdf版と比較して解像度は低いが広告なども掲載されている.電子ジャーナル,デジタルブックは複雑な図をカラーで表示できたり画面を拡大できたりなど,優れた面があるが,その発行は機械的に行われ大きな編集負担増がない.今後,学会ホームページと電子ジャーナル,デジタルブックの連携が検討課題である.所蔵データや過去の記事,クリスタリットなどの資産を活用した企画などが考えられる.3編集体制年間6冊分の記事を編集委員が提案し,原稿を集めて編集を行う体制は委員の熱心な活動に支えられてきたが,研究環境の変化を契機に,編集委員に余力がなくなり,編集に割く時間が減少している様子が目立っている.また,各記事は主に委員からの記事推薦により作られるため,記事掲載の可否や内容の吟味の余地が少なく,内容が専門的になりすぎる傾向にある.編集委員の努力をもってしても,少数の専門家以外には読みにくくなり,その結果,読者離れに繋がっている,との指摘があった.そこで,WGは年間冊子号数を減らすこと(例えば4号)で各号の編集にかける時間を増やし,充実した記事・雑誌を発行できる体制を構築することを提案する.年間冊子号数を減らしただけとならないように,編集委員会の充実が必須であり,そのためにTV会議なども導入して編集委員会幹事らの会合を増やすことは不可欠である.4年間冊子号数を減らし記事を充実させる現行の年間6号を減らし(例えば年間4号として試行),数年後に再検討することを提案する.その際,特集号は従来どおり,一方,ほかの号は分野ごととし,それぞれ1年かけて製作するなどの案も出た.ページ数を減らすことによって大幅な経費削減効果が期待できる.最適ページ数は議論の余地がある.6号のままでもページ数を削減し,経費削減できるが,学会誌をよくするには,年間冊子号数を減らし記事を充実させる編集体制を構築することを提案する(参考).291