ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

会報置など,当時としては最先端の装置を開発されました.また,関西学院大学では4軸回折計と冷凍機を立ち上げられ,水素結合型誘電体の10 Kまでの温度依存結晶構造解析から,水素原子電子雲を観察され,相転移に伴う結合距離と水素敏感ポテンシャルとの関係を明らかにしています.この間に開発された高精度温度制御用装置TEMCONは,構造相転移の温度変化を精密に制御する標準的装置として,物性研中性子施設全国共同利用で用いられています.千葉大学での研究では,低温4軸回折計とイメージングプレート・ワイセンベルグカメラを用い,二次元検出器を用いた逆格子の広い探索と4軸回折計を用いた高精度測定の相補的使用の重要性を示されています.また,関西6 GeV計画というSPring-8建設の初期段階から,構造相転移・化学反応・粉末グループを統括されて,最初の供用装置としての放射光4軸回折計をBL02B1に設置されました.さらに,原子力研究所3号炉に中性子4軸回折装置FONDERを科研費で設置され,日本における本格的な中性子結晶構造解析の道を開かれました.東北大学に転任後は,FONDERを利用した研究に集中され,有機水素結合型誘電体の研究や電気磁気マルチフェロイック物質の研究で世界を先導されています.有機反強誘電体でのX線と中性子の相補的構造研究では,水素原子の原子核と電子雲の測定から電子分極を定量的に示すことで,複雑な相図が構造解析からプロトン・トンネルモデルで説明できることを示し高く評価されています.マルチフェロイック物質の複雑な磁気構造も,単結晶4軸回折装置を用いることで初めて正しい結果を導けることを示し,世界のトレンドに大きな影響を与えました.最近では,韓国原子力研究所中性子施設の4軸回折装置の大幅なアップグレードや世界最大の中性子用湾曲二次元検出器の開発を指導され,さらに韓国結晶学分野での人材育成にも貢献されています.J-PARCについても,単結晶構造解析装置SENJUの提案・設計から装置建設,装置の較正まで中心的に活動され,現在も茨城県の技術顧問として中性子分野を指導されています.野田幸男会員は日本結晶学会の運営に関し,種々の貢献をしてこられました.1988年頃から編集委員として活動され,学会誌の表紙のカラー化,A4版化,入門講座の開始など,大きな改革時に中心的な役割を担われ,1998年からの2年間は編集委員長をされています.日本結晶学会誌における日本結晶学会50周年特別号では企画を担当され,そのときの仙台での年会(50周年記念大会)では実行委員長を引き受けられております.50周年記念大会に合わせ,結晶学会創立以前の機関誌「X線」の復刻版作製にも尽力されました.また最近では,「日本の結晶学(II)-その輝かしい発展-」の編集において,中心的に活躍されました.結晶学会役員としては,6期の長きにわたり評議員を務められるとともに,1996年からの2年間は庶務幹事として学会改革に大きな貢献をされました.さらに日本学術会議結晶学研究連絡委員会では,第17期から19期の委員および幹事を歴任され,グラスゴーでのIUCr1999総会で藤井委員長とともに日本誘致に尽力されたことは記憶に新しいところです.その後のIUCr2008大阪大会では,大会組織委員会の幹事会委員および学術プログラム委員会の物理鉱物小委員会委員長を,2011年からの3年間はIUCr中性子委員会委員をされました.以上のように,野田幸男会員はX線と中性子を用いた結晶構造解析と構造物性分野で,装置開発の先導も含め多大な研究功績を残されており,日本結晶学会の運営にも多くの貢献をされてきました.このような長年の結晶学の発展にかかわる活動に感謝するため,野田幸男会員を日本結晶学会名誉会員として推戴することを提案いたします.略歴:1971年3月関西学院大学理学部物理学科卒業1977年9月大阪大学大学院理学研究科物理学専攻終了(理学博士)1977年10月米国ブルックヘブン国立研究所研究員1979年4月大阪大学教養部助手1981年10月大阪大学基礎工学部助手1989年11月千葉大学理学部物理学科助教授1994年8月千葉大学理学部物理学科教授1998年5月東北大学科学計測研究所教授2001年4月東北大学多元物質科学研究所教授2005年11月研究所副所長,大学研究教育評議員~2008年3月2013年3月東北大学定年退職(名誉教授)2013年4月~茨城県中性子BL技術顧問2014年5月~11月韓国原子力研究所ブレインプールフェロー会誌の将来のあり方WGからの答申2016年11月11日日本結晶学会会長佐々木聡殿委員長:神山崇,委員:五十嵐教之,植草秀裕,菅原洋子,杉山和正,禾晃和,森茂生会誌の将来のあり方WG(以下,WG)は,日本結晶学会平成27年第2回評議員会(2015年7月4日)において設置されました.WGは,2015年10月18日,2016年3月12日,7月2日,8月28日の会議,および,委員間のメールを通じて審議を重ねました.会計幹事の出席による財290日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)