ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

会報直接観察されました.さらに銅ひげ結晶の変形で転位が増える様子を連続撮影し,変形機構の解明からひげ結晶の高強度の原因を明らかにされています.また,銅ひげ結晶表面の完全性を利用して銅のX線原子散乱因子f 220の精密決定に成功されたことは特筆すべきことです.フランス留学後には形状記憶効果を示す超弾性型相変態の研究を,また1982年頃からは磁性金属薄膜製造の研究を開始されています.フォトン・ファクトリー発足では,高分解能トポグラフを連続撮影できる白色・単色放射光トポグラフィ装置を設計製作されています.この装置を使い,Sn単結晶とFe?Si合金単結晶の融解・凝固過程をその場観察されたほか,形状記憶挙動を示すIn基合金の逐次相転移が秩序型であることを現象論的に解明されています.その後も,機能性薄膜材料の合成と構造物性,材料評価手法の開発,磁性微粒子の孤立分散と物性,鉄微粒子ナノコンポジット膜の磁気特性などの研究を手がけられてきました.高速堆積方式の直流対向型スパッタ装置は,研究室の中国人留学生に引き継がれ,現在でも新開発装置を用いた薄膜研究として続けられています.福島大学学長になり,地方大学の利点を活かすべく,直ぐには成果が見えない基礎的な研究継続の重要性を強調し,それらの研究が財政面でも継続できる仕組を構築し,若い研究者の挑戦心を鼓舞することに努力されました.学長就任の翌年3月の震災・原発事故直後には大学で,避難住民の受入れや教員の専門性を活かした現場での調査研究の実施を呼びかけられ,地域社会の目線で,被災地の将来的推移を見通した継続的な復旧・復興を地域大学の立場から積極的に支援されました.実際に,「うつくしまふくしま未来支援センター」と「環境放射能研究所」を組織し,現在も復興に向けた支援・研究活動を展開し,その活動に学生が直接参画できる道をつくることで,科学啓蒙活動とともに問題解決力をもつ人材の育成に貢献されました.入戸野会員は日本結晶学会の運営に大きな貢献をされてこられました.1990年からの2年間は日本結晶学会誌の編集委員長を務められ,1993年から10年間にわたって国際結晶学連合IUCrの学術誌J. Applied CrystallographyのCo-editorを,1990年からの6年間はIUCr結晶成長委員会委員を務められました.結晶学会役員として,1984年には庶務幹事,1987年から1988年には装置委員会委員長,1989年には渉外幹事を歴任され,学会活動に大きな貢献をされました.また,日本学術会議結晶学研究連絡委員会では,1988年の第14期から3期9年にわたり委員を歴任され,第14期には幹事を,第15期には委員長を務められました.この時期には「結晶解析ハンドブック」の発刊があり,入戸野結晶研連委員長も編集委員として参加されています.日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)以上のように,入戸野修会員はX線による動力学回折とそれを利用したトポグラフ法結晶評価の研究で,装置開発も含め多大な研究功績を残されており,日本結晶学会の運営にも多くの貢献をされてきました.このような長年の結晶学の発展にかかわる活動に感謝するため,入戸野修会員を日本結晶学会名誉会員として推戴することを提案いたします.略歴:1965年3月東京工業大学理工学部金属工学科卒業1970年3月東京工業大学理工学研究科博士課程修了(工学博士)1970年4月東京工業大学工学部助手1972年9月フランス・パリ大学VI鉱物結晶学研究所研究員~1974年3月1974年8月東京工業大学工学部助教授1987年2月東京工業大学工学部教授1994年4月東京工業大学留学生センター長~1995年3月1995年4月東京工業大学工学部附属工業高等学校長~2002年3月2002年4月福島大学教育学部教授2002年10月福島大学自然科学系学域準備室長2004年10月福島大学理工学群共生システム理工学類教授2008年4月福島大学大学院共生システム理工学研究科教授2010年4月~2014年3月福島大学学長2015年4月~福島市子供の夢を育む施設“こむこむ館”館長野田幸男会員野田幸男会員は,学部時代の1970年に結晶学会会員になられ,大学院では中性子とX線回折による構造相転移研究で学位を取得されました.この間,山田安定教授の下,X線一次元比例計数管(PSPC)という新しい検出器の開発と応用にも参加されています.ブルックヘブン国立研究所で白根元博士の下,中性子散乱を用いた構造物性の研究に従事された後,大阪大学に助手として着任されました.その後1989年に千葉大学に転任され,1998年からは東北大学で定年退職されるまで物理・結晶学における研究と研究者の育成に尽力されてきました.野田会員は,中性子とX線を用いた結晶構造と物性の研究を精力的に実施されるとともに,日本初のX線用He冷凍低温装置に単結晶用ダイヤモンドアンビルセルとPSPCを組み合わせた,(T=10 K,P=10 GPa)での低温高圧X線回折という新たな測定手法を開発されています.フォトン・ファクトリーの立ち上げに関連して,ライブLaueカメラや3.2μs分解能時分割X線回折装289