ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

クリスタリットマルテンサイトMartensite鋼を高温のオーステナイト状態から急冷したとき,組織によって定まるマルテンサイト変態温度以下で無拡散的に格子変態した微細な針状組織のことを言い,マルテンサイトという名称はその発見者であるAdolf Martensの名前に由来している.炭素(C)を固溶した体心正方晶あるいは体心立方晶の結晶構造をもつα固溶体からなり,非常に硬くてもろい機械的性質をもっている.またマルテンサイトは塑性変形によっても生ずることが近年数多く報告されており,鋼以外にチタン合金などのマルテンサイト変態も材料強度向上の点で非常に注目されている.1)1)“図解金属材料技術用語辞典第2版”,金属材料技術研究所編,p.437(2000).(大阪府立大学大学院理学系研究科久保田佳基)オーステナイトAustenite炭素(C)や合金元素などのほかの元素を固溶したγ鉄で,鋼をA1変態点以上に加熱したときに得られる組織である.オーステナイトという名称はその発見者であるWilliam Chandler Roberts-Austenの名前に由来している.オーステナイトは面心立方構造をもち,非磁性で電気抵抗が大きい.炭素鋼を急冷しただけでは常温でオーステナイト単相組織が得られないが,マンガン(Mn)やニッケル(Ni)を多量に含む場合は常温で容易にオーステナイト単相組織となる.台所などで使用されているステンレス材:SUS304やSUS316などはオーステナイト系ステンレス鋼として有名である.1)1)“図解金属材料技術用語辞典第2版”,金属材料技術研究所編,p.61(2000).(大阪府立大学大学院理学系研究科久保田佳基)訂正本誌58巻4号掲載の最近の研究から「新物質A(TiO)Cu 4(PO 4)4(A=Ba,Sr)における結晶カイラリティの強度とドメイン構造の相関」(pp.174-179)およびクリスタリット(p.195)について,以下の誤りがございました.訂正いたします.(1)p.174,左欄,下から3行目:(誤)そのうち実に65種がカイラルな空間群である.→(正)そのうち実に65種の空間群においてカイラルな結晶構造が許される.(2)p.175,右欄,7行目:(誤)正方晶カイラルな空間群→(正)正方晶系の空間群(3)p.195,右欄,14行目:(誤)結晶構造の対称性を記述する全230種の空間群のうち,65種が回映軸をもたないカイラルな空間群である.→(正)結晶構造の対称性を記述する全230種の空間群のうち,65種が回映軸をもたない空間群である.286日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)