ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

談話室に関して,多くの例が紹介されました.AsCAでもメカノケミカル合成の結果がいくつか報告されており,注目すべき分野でした.講演中には,実際の合成器具が回覧され,大学のセミナーのようでした.ほかにも,MS11 Reactions and Dynamics in the SolidState,MS14 Chemical Crystallography:Hot Structures,MS17 Chemical Crystallography:General Interest,で化学系の発表が多く行われていました.ポスター発表2,3日目の午後に,約1時間の発表時間で行われました.筆者は2日目に発表しました.会場は廊下のようなスペースで,ポスター数に対して小さめだったため,少々窮屈な発表になりましたが,幸いなことに多くの研究者と発表・ディスカッションを行うことができました.あまり得意ではない英語をフルパワーで使いました.質問される箇所は,日本結晶学会で質問されるところと大体同じで,結晶学者が興味をもつところは国を問わないのだなと思いました.ポスター・セッションでも感じたことですが,理論計算を使った議論が重要となる場面が多く見られました.結晶中の相互作用エネルギーを計算して議論している発表も複数あり,自分の発表でも「軌道計算はしていないのか」と質問されましたので,今後はしっかりと勉強する必要を感じました(写真3).おわりにAsCAに参加するのは今回が初めてで,アジアの結晶学を体験することができたと感じました.当たり前のことかもしれませんが,アジアのすべての国に結晶学者がいました.現在は,AsCA参加者は日本人が多いのですが,近い将来にその状況は変わるかもしれないと感じました.今回,国際学会参加という貴重な経験をして,おおいに刺激を受けました.これは本助成を受けなければ得ることができないものでした.今回のAsCA参加を契機とし,将来,アジア最先端の研究を発表できるように精進したいと思います.このような貴重な機会を,本助成を通じてご支援いただいたリガクファンドならびに日本結晶学会に厚くお礼申し上げます.写真3研究室のメンバーで1枚.筆者は写真右上.AsCA2016参加報告東北大学病院理学研究科中村友梨江12月10日.ちょうど一週間ぶりに帰り着いた仙台は雪が散らつく真冬の寒さで,つい前日まで滞在していたハノイが懐かしく感じるほどでした.12月4~7日にハノイ工科大学(Hanoi University of Science and Technology)にて開催された第14回アジア結晶学連合会議(2016 AsianCrystallographic Association Meeting;AsCA2016)は,筆者にとって初めて出席する国際学会であるとともに,初めての海外渡航でもありました.まったくもって英語が苦手な筆者は,この数日間を周りの方々に頼りきりで過ごしてしまったことを情けなく感じ反省しつつも,充実した日々と貴重な経験として得られたものが多くあったことはうれしく思います.南北に伸びたS字を描くベトナムの国土は地域によって気候の差が大きく,北部に位置する首都ハノイには四季があり12月は乾季にあたるそうです.滞在中は最高気温が25℃を超える日が続いたものの,空気がからっとしていていくぶん過ごしやすかったと思います.事前に調べた12月のハノイの気温は20℃程度であったので,その心積もりで冬の東北地方から出てきた身にはいささか厳しい暑さではありました.ノイバイ国際空港からハノイ中心部へ続く道路とその途中の紅河に架かる大きな橋は日本からの援助でもって建設されたとのことで,道端にある青色の地に白い文字と矢印で書かれた案内標識にはどこか見慣れた感があります.のどかな田園風景を抜けて市街地に入ると途端に交通量が増え,絶え間なくクラクションの音が鳴り響いていることに驚きました.自動車よりもバイクが多く走る街中は信号機が設置されていても場所によっては機能していなかったりするので,街中を歩くときはバイクの隙間を縫うようにゆっくり進んで道路を横断しなければならず,慣れるまでは苦労しました.さまざまなお店が連なる街中では生花店がよく見かけられましたが,日本の生花店とは異なり色とりどりのブーケに仕立てた状態で花が売られていました.間口が狭く縦長の建物が密集するハノイの街並みは,西の文化と東の文化,古いものと新しいものが雑多に混ざりあっているという印象を受ました.観光名所の1つであるホアンキエム湖にほど近いホテルから学会の会場へは毎朝送迎のバスが用意されていました.初日の4日は一人で会場に向かわなければならなかったので,自らの英会話能力に不安がある筆者としては大変ありがたく思いながら乗り込むと,いくつかのホテルを回り30分ほどで会場であるハノイ工科大学へ到着しました.途中,1台のバイクがバスに接触したのですが,バスに乗っている数人の日本人以外は誰も気に282日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)