ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

談話室Dinnerにて,タイからの学生らと.Welcome mixerでの1コマ.Special Session on Materials ScienceでのF. Garcia氏によるメカノケミカル法を用いた金属有機構造体(MOF)の合成である.結晶構造情報を基に,物質の構造・結合変化や周囲の物質との相互作用を選択し,機能性材料をデザインすることに成功している点で印象に残った.物質合成に使用する原料を,単に含まれる元素だけで選ぶのではなく,物質の反応性や特性を結晶構造の情報とともに調べて選択する点は大変参考になり,筆者の今後の物質合成に活かしていきたいと思う.中性子に関するセッションでは日本のJ-PARCを用いた研究がいくつかのセッションで発表されていた.筆者も以前,粉末中性子回折の実験をJ-PARCで行い,すばらしい実験結果が得られた経験があり,今回のAsCAでどのような報告がされるのかとても楽しみにしていた.軽元素の可視化や透過性という大きな特徴を用いたさまざまなオペランド測定やin-situ測定が次々と開発され,運用され始めていることは驚異的である.例えば,米村雅雄氏によるリチウム電池の充放電過程における内部挙動のリアルタイム観測である.中性子線によるリチウムイオンの挙動の直接観測は,リチウム電池の充電のメカニズムを理解するためのとても優れた手段であり,実際に使用する電池の詳細な情報が得られると報告された.日本の中性子実験施設は稼動率の点で海外の施設にとどいていないところもあるが,近い将来,どのように発展を遂げるかとても楽しみである.そして,住友ゴム工業㈱のエコタイヤの製品化の事例に見られるように,日本の放射光回折と中性子回折を相互利用した国産の研究が次々と発信されていくことには期待が大きい.筆者もそのようなさまざまな量子ビームが活用できる研究者になりたいと思う.会議全体を通して無機物や低分子に関する発表の数は少なく,生物・高分子についての発表が多かったように感じた.実際に会場のサイズもArea1から3の順で小さくなっていた.ポスターセッションは2,3日目の午後に半分ずつ1時間15分間を使って行われ,約200件の発表がなされた.全員が同じホールの中で発表し,ポスターを貼る順番は各分野で分かれていたため,多くの聴講者が来場して盛況であったが,会場が狭かったため,聞きたいポスター発表までの移動が大変であった.最後に,筆者は今回のAsCAが初めての国際会議参加であったため,発表のときには伝えたいことがうまく表現できなかった部分も多くあったが,いろいろな国の研究者と出会い,直接多くの質問やコメントをいただいたことで,もっと各国の方と意見や情報交換をしたいと思う気持ちが大きくなった.研究だけでなくもっと語学学習も行い,次に国際会議に参加するときには,何気ない講演の合間のcoffee breakや夜の時間という,少ない時間もより活かせるようにしたいと思う.最後になりましたが,日本結晶学会国際会議参加助成プログラムの支援先である㈱リガクならびに日本結晶学会の皆様にこの場を借りて厚くお礼申し上げます.AsCA2016の参加報告書東京工業大学理工学研究科杉山晴紀はじめにこのたび,日本結晶学会2016年度国際会議参加助成を頂き,2016年12月4~7日に開催されたアジア結晶学連合会議(AsCA2016[ハノイ-ベトナム])に参加し,ポスター発表を行いました.アジア各国の研究発表の聴講,また自分のポスターによる発表と議論は,今後の研究展開に大いに参考となるものでした.そして,AsCA参加によりアジアの結晶学の現状,研究の潮流や日本との違いを見ることができました.以下に,筆者の感想と合わせて,会議の様子を報告します.開催地ハノイベトナム社会主義共和国の首都であるハノイは,人口750万人を誇る東南アジア有数の世界都市です.ハノイは温帯夏雨気候にあたり,12月であっても,日本の5月ごろのような温かい気候でした(最高気温が28℃の日もあり夏と感じることもありました).また,乾季で雨が降280日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)