ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

日本結晶学会誌58,279-283(2016)AsCA 2016参加報告第14回アジア結晶学連合会議2016(AsCA2016)参加報告大阪府立大学大学院理学系研究科下野聖矢第14回アジア結晶学連合会議(AsCA2016)は12月4~7日にベトナムのハノイで開催された.ハノイはベトナムの北部に位置する,人口750万人を超え南部ホーチミン市に次ぐ同国第2の都市であり,同国の首都で政治・文化の中心地である.東南アジアでみられる雨季が終わり,気温も20℃前後と非常に過ごしやすい気候であった.会議が行われたHanoi University of Science andTechnology(HUST)はハノイ市街の南端に位置する国立大学である.筆者は学会会場から1.5 kmほど離れたホテルに滞在し,会場への移動には学会によって用意された各ホテル発のシャトルバスを利用した.今回のAsCAでは毎日午前と午後にArea1 - Structural Biology,Area2- Chemical Crystallography,Area3 - Specialized Techniquesという3つのパラレルセッションに分けて発表が行われた.筆者は,放射光粉末精密構造解析法を用いた遷移金属酸化物の結晶構造と物性の関係性について研究していることもあり,主にArea2,3の発表を聞いた.筆者は,12月3,4日に開催されたSatellite meetingから参加した.このmeetingはSchool of Powder StructureDeterminationとSchool of Single Crystal StructureDeterminationに分けて開催された.各会場ともにさまざまな国からの参加者がおり,12月3日は学会の開催期間ではないにもかかわらず,参加者の数はそれぞれ40人を超えていた.参加者にはとてもきれいに印刷された冊子体のテキストが配られた.Powderセッションでは,粉末回折データの収集から,リートベルト法による結晶構造精密化までの一連の流れとその内容の説明が詳細になされた.特に,逆空間法,実空間法,チャージフリッピング法などを用いて粉末X線回折データから有機系化合物の未知構造を解析する方法に多くの質問が出ていた.筆者は無機物の低分子を取り扱っているので,これまではあまり気にしてこなかった部分であったが,近年ではさまざまな物質合成方法が開発され,新規物質が次々と合成されている.その中には単結晶ができない物質も多くあるため,粉末回折データを用いた未知構造解析が重要であり,筆者もその手法を修得して新規物質の結晶構造を解けるようチャレンジしていきたいと思った.会議は12月4日午後のOpening Ceremonyで幕を明け,最初の講演は飯島澄男先生による招待講演であり,カーボンナノチューブの発見や高分解能電子顕微鏡(TEM)を用いた構造決定に関することが紹介された.同日の夜にはWelcome mixerが行われ,アジアの各国から多くの参加者が集まり,ベトナムの伝統音楽の演奏も行われた.会議を通して筆者が印象深かった講演の1つは,会場にて,筆者.日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)Satellite meetingで配布されたテキスト.279