ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No6

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概要

日本結晶学会誌Vol58No6

久保田佳基,秦野正治,菖蒲敬久,森茂生用いることで,従来,SUS304の室温加工下では生じ難いに切り出した.検出器にはPilatus 100 k(受光部面積83.88と考えられているγ→α’変態中のε相)の形成について×33.5 mm 2,ピクセルサイズ172×172μm 2)を用いた.明らかにし,γ→α’変態機構について検討を行った.7)検出器は2θアームに取り付け,2θ=12°の位置に固定した.試料と検出器の距離は1100 mmとした.検出器は2.実験方法2θが4°の範囲をカバーすることができ,SUS304のγ相や試料は,実機のSUS304製品板(18%Cr-8%Ni-Fe合α’相の典型的な回折線が観測できる.試料片は入射ビー金)を用いた.引張試験については,JIS13B号引張試験ムに対して垂直に置いた.また,図2cに示す試料負荷装片を作製し,室温にて歪速度1.3×10-3 /sおよび1.3×置をHuber回折計のφステージにxyz自動ステージとと10-2 /sで行った.引張試験後の試験片中に発生した加もに取り付け,引張その場測定を行った.測定は,目的工誘起α’体積率は,フィッシャー製マイクロスコープの負荷をかけた後,回折データ測定を定時計数法で行っMP30により測定した.また,透過型電子顕微鏡観察おた.それぞれの条件での測定時間は60分とした.よび放射光X線回折測定用として,歪速度1.3×10-3 /s3.結果と考察で種々の引張予歪(伸び率)の試験片を作製した.引張試験後,引張試験片を切り出し研磨・電解研磨3.1 SUS304の引張特性を行い,透過型電子顕微鏡(JEM-2010)およびローレン図3aに,歪速度1.3×10-3 /sおよび1.3×10-2 /sの応ツ電子顕微鏡(JEM-2010M)を用いてSUS304中に含ま力-伸び曲線を示す.歪速度の低下により,破断強度はれる転位や積層欠陥などの微細組織と磁性相であるα’相650 MPaから750 MPa,破断伸びは50%から70%へ上の組織観察を行った.昇した.これより,加工硬化は歪速度の1.3×10-2 /sからX線回折実験はSPring-8の単結晶構造解析ビームライ1.3×10-3 /sへの低下により大きくなることがわかる.ンBL02B1において行った.9)本研究では相変態において900微量生成するε相を観測すること,そして,試料片の表800 (a)面だけでなく試料全体からの情報を得ることが重要であ700るため,高強度かつ高エネルギーのSPring-8の放射光回600折実験が必要であった.測定はHuber 7軸回折計を用い500て,図2aおよびbに示すような透過配置により行った.400SPring-8の偏向電磁石から放射されたX線をSi(311)二300結晶モノクロメータによりエネルギー30.05 keV(λ=1.3×10200-3 /s0.4124 A)に単色化し,コリメータにより3.0×0.5 mm 2 1.3×10 -2 /s100Flow Stress (MPa)00 10 20 30 40 50 60 70 80Elongation (%)図2放射光X線回折実験による引張その場観察装置.(Instruments for an in-situ measurement ofsynchrotron diffraction data under tensile loading.)(a)装置レイアウト,(b)回折装置写真,(c)試料負荷装置写真.Volume fraction ofα'-martensite (%)2520151050(b)○1.3×10 -3 /s△1.3×10 -2 /s0 10 20 30 40 50 60 70 80Elongation (%)図3(a)SUS304における応力-伸び曲線と(b)伸びとα’相の存在割合の関係.(Stress-strain curves andvolume fraction of strain-inducedα’-martensite oftensile strained SUS304 at room temperature.)歪速度はそれぞれ赤色が1.3×10-3 /s,黒色が1.3×10-2 /s.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.274日本結晶学会誌第58巻第6号(2016)