ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No2

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概要

日本結晶学会誌Vol58No2

日本結晶学会誌 第58巻 第2号(2016) 107クリスタリットトポロジカル数Topological Charge光渦や電子渦のらせん状の波面(等位相面)を特徴付ける数.波面がらせん構造をもつ場合,その中心軸(結晶学的対称性のらせん軸に相当する対称軸)を囲む閉曲線に沿った位相勾配の周回積分は,整数lを用いて2πlとなる.この整数lはトポロジカル数と呼ばれる.トポロジカル量子数,トポロジカルチャージと呼ばれることもある.トポロジカル数にプランク定数を2π で割った?を掛けた値は,軌道角運動量を与える.らせん状の波面を格子欠陥のらせん転位に置き換えて考えれば,トポロジカル数はバーガースベクトルに相当する.(名古屋大学未来材料・システム研究所 齋藤 晃)ウィリアムソン-ホールプロットWilliamson-Hall Plot結晶からの回折X線は結晶子サイズ,格子ひずみ,積層不整などの要因から広がりが生じる.この回折線の広がりの結晶子サイズと格子ひずみによる影響を分離する方法の1つがWilliamson-Hallプロットである.各回折ピークの積分幅βは,結晶子サイズと格子ひずみに起因するそれぞれの広がりの和で記述できる.結晶子サイズによる回折線の広がりが1/cosθ に,格子ひずみによる広がりがtanθ に比例すると仮定し,ローレンツ関数で表される複数の回折ピークに対して横軸にsinθ/λ,縦軸にβcosθ/λを算出しプロットする.このWilliamson-Hallプロットが直線的であれば,グラフの勾配が格子ひずみを,縦軸切片の逆数が結晶子サイズを与える.(福岡大学理学部物理科学科 田尻恭之)C5 対称C5 Symmetry同一な5つの物体が1つの軸の周りに72 度(360°/5=72°)ずつ回転して配置している状態をC5対称という.5 回回転対称,もしくは5 回対称と呼ばれる場合もある.この際の対称の中心となる軸は5回軸,もしくは5回回転軸と呼ばれる.C5 対称なものの例としては,函館にある五稜郭や,桜の花びらなどが挙げられる.同様に,同一なn個の物体が1つの軸の周りに360/n度ずつ回転して配置している状態をCn 対称(もしくはn回回転対称,n 回対称)という.(北海道大学大学院先端生命科学研究院 田中良和)D5 対称D5 SymmetryC5対称に配置した5つの物体が2組存在し,それらの5 回回転軸同士を反対向きにした状態で重ね合わせた場合の物体の配置をD5対称という.もしくは,2回回転対称に配置した2 つの物体が5 組存在し,それらが,2 回軸に直交する軸の周りに72度ずつ回転して配置している状態とも言い換えることができる.D5対称には,1つの5回回転軸とそれに直交する5つの2回回転軸が存在する.2つの桜の花を背中合わせにして接着させた場合,D5 対称の物体となる.(北海道大学大学院先端生命科学研究院 田中良和)多価メモリMultivalued Memory情報記録,演算方式には二値状態が用いられている.情報,演算のためのセルを微小化して集積化することにより動作時の消費電力の低減,動作速度の向上などが期待できる.微細加工技術は年々,発展しておりセルは微小化しているが限界がある.例えば,1つの記録セルに複数の状態を保持する多値メモリが実現すれば,記録や演算を飛躍的に向上させることができる.マルチフェロイック物質は複数の強的秩序を有するため多値メモリ材料として期待されている.(東北大学工学研究科応用物理学科 永沼 博)スピントロニクスSpintronics従来の半導体エレクトロニクスでは電荷の自由度を利用してきたが,スピントロニクスでは電荷だけでなくスピンの自由度を積極的に利用した新しい研究分野である.スピン偏極した電子を非磁性体に注入,拡散させることにより従来のエレクトロニクスでは実現できなかった新しい機能を創出することに成功している.代表的な成果として,1988年にAlbert Fert博士,ペーター・グリューンベルク博士らによって発見された巨大磁気抵抗効果がある.巨大磁気抵抗効果によりハードディスクの読み取り磁気ヘッドが高感度化し,記録密度を飛躍的に増大させることができた.巨大磁気抵抗効果は強磁性体中に電子を通過させることによりスピン偏極電流を生成する方法が用いられている.最近では,非磁性体を用いたスピン偏極電流の生成方法も確立してきており,