ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No2

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概要

日本結晶学会誌Vol58No2

100 日本結晶学会誌 第58 巻 第2 号(2016)裵 寅兌,永沼 博面体晶構造に特有のNBEDパターンが明瞭に,かつSTO基板のNBEDパターンと重複することなく観測することができており,[010]STO に比べて[011]STO 方位のほうがBFOの菱面体構造の同定に優れていることが明らかとなった.3.5 [131_]STO方位からのNBED や構造因子計算結果図5a と図5c に[010]STOの断面試料をTEM観察室の中で25°傾斜させて得られたBFOとSTOからのNBEDパターンを示す.図5b と図5dは各々と対応した構造因子の計算結果である.図5aは菱面体晶構造のBFOの[441]回折パターン,図5c はSTOの[131_]回折パターンと一致していることがわかる.[010]STO と[131_]STO の間の角度は25.2°である.実際に測定すると[241]BFO と[441]BFO の角度は25° であり計算結果と一致することがわかる.しかし,[131_]STO方位と[010]STO方位の場合,STO基板とのNBEDパターンが似ているため,NBEDパターンの分離のために高精度の観察を行う必要がある.このように,3方位で電子線回折実験を行って比較検討したところ,[011]STO 方位が最も明瞭に菱面体晶の構造を判別できることが明らかとなった.1方位からの観測により擬立方晶との区別を判断する場合,[011]STO 方位からの断面観察が最も多くの情報を得られることがわかった.3.6 エピタキシャル関係とその原子モデル図6 は[010]STO 方位[図2]と[011]STO 方位[図3]の構造解析を元にして得られたエピタキシャル関係を実空間での原子モデルで示した構造モデルである(BFOとSTOの界面が直線であるのは原子モデルを簡単にして視覚的に理解しやすくするためであり,実際の界面の構造を正確に反映していない).[010]STO(=[241]BFO)方位からの原子配列である図6aから,BFOとSTOの面垂直や面内方位の格子面の間隔が類似していることが直感的に理解できる.図6b は[011]S TO(=[211]BFO)方位からの原子配列を観察しており,同様に面垂直や面内方位の格子面の間隔が類似しているのがわかる.これらの結果は,BFO/STOの界面での格子歪みが最小限となっていることを視覚的に導くものである.以上のことから,BFO薄膜はSTO基板上に成長する際,界面での格子歪みを最小限に抑えて菱面体構造を保ちながらエピタキシャル関係をもって成長することがわかった.(a)(b)BFOSTO図4 (a)図2aにてBFO薄膜の白い四角形1の部分からの高分解能像とそのFFTパターン,(b)図2aにてSTO基盤の白い四角形2の部分からの高分解能像とそのFFTパターン.19) ((a) HRTEM imageof BFO layer denoted by rectangle 1 in Fig. 2a withcorresponding FFT pattern as an inset;(b)HRTEMimage of STO substrate denoted by rectangle 2 in Fig.2a with corresponding FFT patterns as an inset.)(d)310101(c)(b)014330(a)図5 [010]STO晶帯軸から25°傾斜されてから得られた(a)BFO薄膜と(c)STO基盤からのNBEDパターン.(b)と(d)は各々に相当する構造因子の計算結果である.19)(NBED patterns from BFO layer(a) and STO substrate (c) that are acquired ~25°away from [010]STO zone axis. The corresponding SFcalculation is shown in( b) and( d).)