ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No2

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概要

日本結晶学会誌Vol58No2

66 日本結晶学会誌 第58 巻 第2 号(2016)稲熊宜之X=Oのとき,左辺は,ap ~ √2d(A-O)(=√2(rA+rO))と考えると式(2)で示したPvの許容因子に対応するので,許容因子の減少に伴う酸素八面体のtiltの増加はこの考えから説明できる.イオン半径から許容因子を算出しtiltを見積ることが可能であるが,Pv型Li イオン伝導性酸化物の場合,Aサイト付近にLiも存在するため,Aのイオン半径をそのまま用いることはできない.そこで,ap を用いることにした.同じBイオンを含むPv酸化物の構造データから算出したB-O間距離を比べるとほぼ同じであり,図2cのようにB-O間距離が変化せずにtiltするモデルの妥当性を支持している.式(3)から平均的なtilt角を見積ることができ,BNサイズと対応可能である.そこで,図5a に示したPv型Li イオン伝導性酸化物について,式(3)の左辺の値に対してEaをプロットした(図5b).Bイオンが2種類ある場合,B-O距離が大きいほうがtilt角が大きくなり,BNサイズを狭め,イオン拡散を律速すると考えられるので,(3)のB-O間距離dB-Oが大きいほう(dB-O(large)とする)の値を代入した.ここで,dB-O(large)は構造解析がなされているPvのB-O間距離dB-Oを用いた.図5b から(Ln,Li)TiO3 ,(A,Li)(Ta,Ti)O3 ,(Ln,Li)NbO3 ,(Ln,Li)TaO3 系についてはほぼ同じ傾向に従うことがわかる.このことは,局所的なtiltがBNサイズを低下させ,Ea を支配することを示唆している.しかし,(La2/3-xLi3x)(Mg1/2W1/2)O3 や(Sr,Li)(Co0.225Ta0.775)O3はその傾向から外れており.別の観点から考える必要がある.上記で述べたように実験からは,イオン拡散の活性化状態は,4つの酸素で囲まれたBNサイズに依存することが示唆された.しかし,LLTOに関する第一原理計算ではイオン伝導の活性化状態は,4つの酸素で囲まれた位置ではなく,Aサイト内の位置であるという結果が得られている.これについては5.3で述べる.5.La2/3-xLi3xTiO3とその関連物質における構造とイオン拡散5.1 La2/3-xLi3xTiO3(LLTO)の相関係と結晶構造Vallinoら,42)Robertsonら43)がLLTOの相関係を,また関連物質のPr2/3-xLi3xTiO3,Nd2/3-xLi3xTiO3の相関係については,それぞれRobertsonら,43)Molaresら44)が報告している.LLTOはPv型Li イオン伝導体の中で最も高いイオン伝導度を示し,比較的組成が簡単なこと,組成や温度によって結晶構造が変化することから盛んに研究が行われている.LLTOは0.04 < x< 0.14の範囲でPv相が得られ,高温から徐冷して得た試料の構造において,(1)図3bのようにc軸方向に占有率の異なるLa層が交互に規則配列し,その結果,2倍周期の超格子構造をもつ,(2)室温においてLi濃度がx<0.08では直方晶,0.08 < x <0.14では正方晶格子をとり,11),43),45)-49)xの増加(Li量の増加)とともにLa層の配列の規則化度(=[2(La-rich層の占有率)-1]20)または,[R(La-rich)-R(La-poor)][/ 1-R(La-poor)],50)R(La-rich),R(La-poor)はそれぞれLarich層,La-rich層の占有率)は減少し(図6,奥村ら51)による),同時に直方歪も減少する,11),37),46),48),50),52),53)(3)温度とともに酸素八面体のtilt角が減少し,52)さらに高温でLaの配列の規則化度が小さくなり,やがて不規則になるという特徴をもつ.(1)に関連して,3で述べたように,Laの規則配列とSOJT効果が協調して,Ti イオンは,La-poor 層の方向にシフトしている.(2)に関連して,x< 0.08 では,c軸方向にLaの規則配列,b軸について酸素八面体の反位相のtilt(a0b-c0)が見られ,これらの結果,a(~2ap)× b(~2ap)× c(~2ap)の直方晶格子をもつ(空間群:Cmmm)(図3b).25),28),52)-54)このときc(a) (b)図5 さまざまなぺロブスカイト型リチウムイオン伝導性酸化物の活性化エネルギーと(a)ぺロブスカイトパラメーターapおよび(b)ap/2d(B-O)largeとの関係(.(a) Activation energies for ionic conduction versus( a) perovskiteparameter, ap and( b) versus ap/2d(B-O)large for several perovskite-type Li ion-conducting oxides.)