ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No6

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概要

日本結晶学会誌Vol57No6

日本結晶学会誌 第57巻 第6号(2015) 357会 報6 その他総会終了直前に,千田行事幹事より平成27年度結晶学会ポスター賞の選考結果が発表された.審議事項1.日本結晶学会の法人化禾会計幹事より,日本結晶学会法人化を提案するに至った背景と,評議員会・幹事会での審議の経緯が報告された.質疑応答の後に,2月に先行して設置する新法人に3 月末日までに全会員と資産を移行する方針が全会一致で承認された.2.個人会員会費値上げについて禾会計幹事より,平成28年度から個人会員会費を値上げするに至った背景と,評議員会・幹事会での議論の経緯が報告された.全会一致で平成28年度からの個人会員会費値上げが承認された.ただし,初年度は法人移行に伴い事業年度が2 ヶ月ずれることに配慮した金額となることが併せて説明され,承認された.3.名誉会員の推戴庶務幹事より,坂田誠会員を名誉会員に推戴する提案があり,全会一致で名誉会員に推戴された.引き続き日本結晶学会名誉会員推戴式,日本結晶学会賞受賞式が行われた(写真).写真 名誉会員推戴式および日本結晶学会賞授賞式後の写真総会資料:日本結晶学会名誉会員の推薦書坂田 誠会員坂田誠会員は,中性子回折による非調和熱振動の研究により東京教育大学から理学博士の学位を授与され,名古屋大学工学部の助手として任用されました.その後,学術振興会長期派遣留学生,客員研究員として英国ハーウェル原子力研究所で研究を進め,英国シェフィールド大学理学部の助手に着任されました.約5 年間の英国での研究の後,名古屋大学工学部助教授に就任し,同教授を経て名古屋大学工学研究科教授として定年退職されるまで,Ⅹ線および中性子散乱・回折による回折結晶学の分野の研究に尽力されました.名古屋大学退職後は高輝度光科学研究センター客員主席研究員として放射光を用いたX線構造研究の普及に尽力されています.坂田誠会員の研究は,中性子回折による非調和熱振動と構造相転移の研究,非晶質合金の構造研究,半導体多層膜および半導体表面の構造研究,マキシマムエントロピー法による精密結晶構造解析の研究,およびこれらの研究を遂行するための装置開発など,結晶学の広い範囲にわたっています.坂田誠会員は,平成元年より世界に先駆けマキシマムエントロピー法(MEM)による精密結晶構造解析の研究に特に力を入れられ,構造モデルを用いずに,観測データに合致する電子密度分布あるいは核密度分布を直接求めることを可能にしました.この新しい方法により,シリコンの共有結合電子,氷の水素結合電子,ルチルの非調和熱振動などの詳細な構造に関する情報を得ることに成功しました.マキシマムエントロピー法の導入により回折結晶学の新しい局面を切り拓くことに貢献したことから,1992年に日本結晶学会より日本結晶学会賞を授与されました.坂田誠会員は,マキシマムエントロピー法による精密結晶構造解析を様々な材料に応用し,材料研究に貢献するために,論文誌上での手法の公表とプログラムの作成・配布を積極的に行われました.また,国際結晶学連合のMEMプロジェクトのプロジェクトリーダーを務められるなど広く方法の普及に努められました.2008 年には,これらの業績が我が国の科学技術に関する研究開発の顕著な成果と認められ,文部科学省より文部科学大臣表彰科学技術賞を授与されました.坂田誠会員は,日本結晶学会の評議員として長年の間学会の企画・運営にあたってこられました.2012 ~2013年度には日本結晶学会の会長を務め,学会の発展に尽力されました.会長任期中に2014年を世界結晶年に制定することが国際連合総会で決定され,世界結晶年日本委員会副委員長として世界結晶年の活動にも尽力されました.1997 年から日本学術会議結晶学研究連絡委員会の委員を務められ,2001年から2003年まで同委員会の委員長を務められました.2002年には同委員会委員長としてスイス・ジュネーブで行われた第19回国際結晶学連合(IUCr)総会において,総会の日本への誘致演説を行い,第21回総会の大阪誘致を成功に導かれました.以上のように,坂田誠会員は,X線,中性子線を利用した回折結晶学の分野で具体的な成果を示すとともに,その手法を関連科学分野に広めるために大きく貢献されました.このような長年の結晶学の発展に活動されたことに感謝するため,坂田誠会員を日本結晶学会名誉会員として推戴することを提案いたします.