ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No6

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概要

日本結晶学会誌Vol57No6

350 日本結晶学会誌 第57 巻 第6 号(2015)日本結晶学会誌 57,350(2015)第3 回群論・対称性トレーニングコースに参加して大阪大学歯学部 武部克希1.初めに2015 年8 月1日から5日まで大阪大学蛋白質研究所にて開催された,第3 回群論・対称性トレーニングに参加する機会を得ることができ,その体験談について書かせていただきます.今回は3 回目ではありますが,結晶学会のはじまりとも深い縁のある関西で初めての開催とあって,申込みの開始からおよそ2時間で満席となる高い人気であったと伺いました.講義はフランス・ロレーヌ大学のネスポロ・マッシモ教授が日本語で行ってくださいました.タンパクの構造解析を行う上では,空間群や対称性は基本としてしっかり認知しているのが理想です.しかし恥ずかしい話ですが,私は対称性に対してあやふやなイメージしかもっておらず,解析ソフトの優秀さに頼ってしまい,この基本をしっかり理解していませんでした.そのため今回の講座に参加して,対称性をしっかり理解しようと考えていました.2.トレーニングコース概要講義は前述のとおり5日間にわたって行われました.内容としては,行列式の名前や計算方法といった線形代数の基本の確認から始まり,群論やワイコフ座標,行列を用いた対称操作の表し方などを経由しながら,消滅則などを学習していくといった内容でした.講義は行列の演算といった,学部生にはまだ馴染み深い所から始まりました.そんな中,初めの山場は群論でした.群論には今までまったく触れたことがなかったため,新しい概念が次々に出てきました.幸い,この分野は具体例を思い浮かべることで理解することができました.前半で苦戦したのは,回反操作をイメージすることでした.自分にとっては新しい概念であったこともあり,対称心や回映心で混乱してしまいました.ついていけなくなるかと心配でしたが,休み時間に本コースの参加者に教えていただき,また先生に直接伺うことでなんとか解決することができました.その後は問題なく進んだのですが,最大の山場はワイコフ座標でした.ここで平面の中から空間をイメージせねばならず,さらには普段用いたことのない,‘ a ’や‘ b ’や‘ n ’などが登場し,なかなかイメージや理解ができず苦戦しました.この問題は後述の個別質問会において先生と参加者に教えていただくことで,ここでも無事に解決できました.その後,講義は対称操作を行列で表すといった分野に進みました.ここで1 日目,2日目の知識がしっかりと活かされました.そして最後に消滅則などを学びました.このように,なんとか最終日まで落ちこぼれることなく進めたのですが,マッシモ先生や参加者におおいに助けられたお陰でもありました.3.懇親会参加者同士の親睦を深めあういい機会として,1日目の講義後に懇親会が行われました.懇親会では乾杯の後に自己紹介が行われました.参加者の専門分野や立場は本当にさまざまです.鉱物の研究をなさっている修士課程の学生の方や,タンパク質の構造の研究をなさっている研究員の方,また,化学物質の研究をなさっている助教の方,ほかにも企業から参加されている方や,公的研究機関から来られている方がおられ,その多様性に大変驚きました.ここで多くの方と親睦を深めることができ,たくさんの友人ができました.4.個別質問会個別質問会は,18時に講義が終了した後,20時より核物理センターで行われました.内容は講義における疑問点を理解するためにマッシモ先生に質問を行い,それに対して先生がホワイトボードを使って解説を授業形式で行い,さらに教えていただいたことを受け,理解を深めるために議論などを行うというものでした.本会は最終日を除いて全日程で行われ,毎日大勢の人と議論することができました.自分で質問するだけでなく,自分が講義でわからなかったことを質問してくださる方がおられ助かったり,私がまったく思いつかなかったことを質問していらっしゃる方がおられ刺激を受けたりしました.講義の理解が一層深まり,とても有意義でした.個別質問会が終わった後も,参加者の方々と個人個人の専門分野の話で盛り上がることが多かったです.次の日の講義に備えしっかり頭を休めるべきであるにもかかわらず,夜遅くまで話し込んでしまうことも多くありましたが,いろいろな分野の話を聞くことができ,非常に良い経験になりました.