ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No6

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概要

日本結晶学会誌Vol57No6

日本結晶学会誌 第57巻 第6号(2015) 337巨大受容体sorLAのVps10ドメインによるアミロイドペプチド認識の分子機構とって有害となり得る広範囲のβ 凝集ペプチドを,恒常的に細胞内で排除する役割をもっていることが強く示唆された.このような結論に至るには,sorLA Vps10p ドメインの構造学的研究が不可欠であり,分子の構造機能研究が医学的研究の基盤として貢献できた好例であると言えるのではないだろうか.また,βシート拡張によって,リガンドペプチドの「配列」ではなく,β 凝集しやすいという「性質」を特異的に認識するメカニズムはあまり他に類を見なく,タンパク質研究としても新しい知見が得られた興味深い例であると言える.このように,sorLAの細胞内でのAβペプチド除去に関しては,その分子基盤を確立することができた.しかし,筆者らが提唱したメカニズムは,Vps10pドメインの機能のみでほぼ説明可能であり,sorLA分子がなぜこのような巨大な細胞外領域をもっているかは説明できない.筆者らは現在,この細胞外領域全体がどのような形状をとっているのかを可視化しようと研究を進めており,それを通じてまだ明らかになっていないsorLAの機能に迫っていきたいと考えている.謝 辞本稿の研究は,大阪大学蛋白質研究所附属蛋白質解析先端研究センター分子創製学研究室 高木淳一教授の主導で行われたプロジェクトである.当プロジェクトに直接参加された中田善三郎博士(現塩野義製薬),長江雅倫博士(現理化学研究所),高木(新留)穏香博士,禾 晃和准教授(現横浜市立大学),共同研究をさせていただいた矢木(内海)真穂博士(岡崎統合バイオサイエンスセンター),加藤晃一教授(名古屋市立大学・岡崎統合バイオサイエンスセンター・分子化学研究所)に,この場を借りてお礼申し上げたい.文 献1) E. M. Quistgaard, et al: Nat. Strcut. Mol. Biol. 16, 96( 2009).2) C. R. Scherzer, et al: Arch. Neurol. 61, 1200( 2004).3) O. M. Andersen, et al: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102, 13461(2005).4) S. E. Dodson, et al: J. Neurosci. 28, 12877( 2008).5) S. Caglayan, et al: Sci. Transl. Med. 6, 223ra20( 2014).6) Y. Kitago, et al: Nat. Struct. Mol. Biol. 22, 199( 2015).7) P. Stanley: Mol. Cell. Biol. 9, 377( 1989).8) J. G. Flanagan, et al: Methods Enzymol. 327, 19( 2000).9) S. Mizushima and S. Nagata: Nucleic Acids Res. 18, 5322( 1990).10) Z. Nakata, et al: Acta Crystallogr. Sect. F Struct. Biol. Cryst.Commun. 67, 129( 2011).11) A. Trovato, et al: Protein Eng. Des. Sel. 20, 521( 2007).プロフィール北郷 悠 Yu KITAGO大阪大学蛋白質研究所Institute for Protein Research, Osaka University〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-2大阪大学蛋白質研究所4 階高木研究室Takagi Lab. 4F, Institute for Protein Research, OsakaUniversity, 3-2 Yamadaoka, Suita city, Osaka 565-0871, Japane-mail: kitago@protein.osaka-u.ac.jp最終学歴:博士(理学)専門分野:構造生物学,タンパク質のX線結晶学現在の研究テーマ:細胞外タンパク質の構造生物学趣味:ギター,料理