ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No6

ページ
25/60

このページは 日本結晶学会誌Vol57No6 の電子ブックに掲載されている25ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol57No6

日本結晶学会誌 第57巻 第6号(2015) 335巨大受容体sorLAのVps10ドメインによるアミロイドペプチド認識の分子機構はいたが,それ以外に取り立てて特徴的な側鎖同士の相互作用が確認できず,このリガンド認識がβ シート拡張のみにほぼ依存していることが示唆された.リガンドフリー体ではディスオーダーしていたL2ループは,オーダーして短いヘリックス構造をとり,長く伸びた構造から短いヘリックスに大きく構造変化したL1ループとバンドルを組んだうえで,リガンドペプチドをβ シートの反対側から押さえつけるような場所に位置していた(図3b).この結晶構造を基に分子動力学計算を行って分子の動きをシミュレーションすると,全体の運動性はほぼ結晶学的な温度因子の分布と一致し,βプロペラー上下のループ部および10CCbドメインの運動性が高いことを示唆していたが,L1,L2部は温度因子が比較的高いことに反して運動性がそこまで高いとは言えず,かつシミュレーション時間を通じて互いに連動したような動きを見せたことから,これら2 つのループ部は,リガンドペプチドとの3 者で協調して互いの構造を支えあう機構になっているのではないかと考えられた.3.4 sorLA Vps10pドメイン-A βペプチド複合体の構造解析sorLA Vps10p がAβペプチドを特異的に認識することをわれわれが初めて発見したことを述べた.この複合体の結晶化も困難を極めたが,Aβ40上での位置や残基数が異なる複数のペプチド断片で試行した結果,Aβ6-15(H6DSGYEVHHQ15)というペプチド断片を使い,図3 結晶構造解析によって明らかになったsorLA Vps10pの分子モデル.(The molecular models of SorLA Vps10pdomain.)(a)リガンドフリー体,(b)プロペプチド複合体,(c)Aβ ペプチド複合体.点線はディスオーダー領域を表す.β プロペラーのブレード番号を(a)に示す.3.6 項で紹介しているGly511 の位置を●で示す.図4 βプロペラー内トンネル内側から見たリガンド認識部位の拡大図.(The close up views of ligandrecognition sites inside the tunnel located at the centreof β-propeller.)(a)プロペプチド複合体.sorLAVps10p βプロペラー1番目のβシート内縁部にβシート拡張によって認識されている.(b)Aβペプチド複合体(2.5 σ Fo-Fcマップ).プロペプチドと同じ位置に電子密度が確認できる.