ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

ページ
9/88

このページは 日本結晶学会誌Vol57No4 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol57No4

SHELXLのコマンドを使いこなそう!3.コマンドの指定の仕方3.1入力の文法insファイルにおいて,原子座標および温度因子のデータなど複数行にまたがるとき,前の行の最後に「=」マークを入れて,続く行の最初に1カラム以上の空白を入れる.このような継続行以外で,最初の1カラム目が空白である場合は,コメント行として読み飛ばされる(resファイルにも出力されない).もし,resファイルにも保存したいコメント行であれば,各行の初めに「REM」と入れる.こうすることで,解析の途中に例えば束縛条件を仮に解除したいとき,その行を消去しないまま保存できる.SHELXLのマニュアルでは,コマンドの引数が例えば次のように表記されている.HFIX mn U[#]d[#]atomnamesSAME s1[0.02]s2[0.04]atomnamesDFIX d s[0.02]atom pairsここで,mn,Uやdなどの文字は,計算に必要な特定の数値を表していて,その直後に大カッコ[]が続いているときは,その中にdefault値が示されている.それが[#]となっている場合は,与えられた情報をもとに,プログラムが妥当なdefault値を自動的に設定することを意味する.したがって,通常は(default値を使うため)それらの値を入力する必要はない.引数の入力は自由形式(数値などを1つ以上のスペースで区切って並べる方式)であり,入力されていない引数をプログラムが自動的に判断して,default値を割り当てる.atomnamesのところには,原子名を1つ以上指定する.原子座標データの連続した行に入っている非水素原子を,簡略記号(>)を使ってまとめて指定することもできる.例えば「C2 >C5」と入力すると,C2の原子座標の行から始まり,その後に続くC5の行に至るまでに含まれている非水素原子を,すべて指定したことになる.atom pairsのところには,原子を対にして,必要な数だけくり返して入力する.表1 atomnamesで指定される対象.(Selected objectsindicated by atomnames.)分類指令の対応コマンド(ア)指定したその原子ANIS*,BLOC,CHIV,CONN*,EADP,EXYZ,HFIX,ISOR*,MPLA,OMIT*,RTAB(イ)指定した中に含まれている(BOND)*,DELU,RIGU*,2原子で,かつ結合表にそSAMEの1-2あるいは1…3距離が登録されているペア(ウ)指定した中に含まれているSIMU*2原子で,かつ指定した距離以内に接近しているペア(エ)連結した4原子以上CONF*記号($)の後に(SFACコマンドで入れた)元素記号を書くことで,原子をまとめて指定できる.ただし,「BOND $H」とすると,水素に関する距離角度も含めるという意味になる.日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)atomnamesは,指定したその原子が個々に指令の対象である場合が多い.ただし,指定した中に含まれている2原子で,かつ距離が一定の条件を満たすペアが指令の対象になるコマンドもある(表1).コマンドによっては,原子名の代わりに元素記号を使ってまとめて指定することもできる(表1の脚注参照).例えば次のように指定する.ANIS $CL(すべての塩素原子を非等方性にする)BOND $H(水素原子も含めて結合距離角度を出力する)なお,atomnamesを指定せずにコマンドを入れた場合,DELUやSIMUなどは,全非水素原子を指定したとみなすなどの便利な機能がある(表2).atom pairsに関しては,指定を省略されることは想定されていないが,唯一の例外はSADIである.atom pairsの指定なしにSADIを使うと,insファイル中に入っているすべてのSAMEコマンドに対応するSADIコマンドの指令を,resファイルの最後に出力する.これは,いわゆる隠れ便利機能である.3.2等価位置の表記水素結合など分子間相互作用を調べる際に,等価位置の原子も含めた距離や角度の計算が必要になってくる.また,分子が特殊位置に存在し,乱れているような場合は,等価位置の原子との距離に束縛をかける必要が出てくるかもしれない.このようなとき,等価位置の対称操作とその番号をEQIVコマンドで定義し,その番号を原子名の直後に引用して指定する.例えば,水素結合の計算の指令HTABコマンドは,次のような形で用いる.EQIV $1 X-1, Y, ZEQIV $2 X+1, Y, Z-1HTAB N6 O1HTAB O2 O1_$1HTAB N6 O2_$2つまり,insファイルの先頭に入れたSYMMコマンドの対称操作とは無関係に,個々の等価位置をEQIVコマンドで定義して使う.この対称操作の記号($)を引用していない原子は,恒等変換(X,Y,Z)の位置とみなされる.なお,対称操作の番号を引用する際は,その行の前表2 atomnamesを省略したときのプログラムの対応.(Interpretations when atomnames are omitted.)分類プログラムの対応コマンド(1)全非水素原子を指定したとDELU,ISOR,RIGU,SIMUみなすその次から読み込む全非水ANIS,CONN素原子を指定したとみなすHも含めた全原子とみなすBLOC(2)結合表に登録されている全BOND,CONF結合(つまり全非水素原子間)を指定したとみなす(3)原子名の指定省略は想定されていないCHIV,EADP,EXYZ,HFIX,MPLA,RTAB,SAME,(OMIT)**OMITは,原子だけでなく反射を除外するときにも使う.213