ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

日本結晶学会誌57,211-218(2015)SHELXL入門講座(3)SHELXLのコマンドを使いこなそう!慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂Shigeru OHBA: Let’s See and Use Commands of SHELXL !The 3rd lesson in this tutorial course of SHELXL includes an overviewof the instruction commands, a brief guide to their input formats, someQ&A concerning their applications, and a review of the treatments againstdisordered crystal solvents in recent papers.1.はじめに結晶構造の精密化プログラムSHELXLは,初心者にとって取り付きにくい.その理由は,insファイルに入っているコマンドの意味および使い方が(暗号に近い効率のよい引数で多様な機能を指定できる半面),慣れないとわかりにくいからである.また,何かをしたくても,どのコマンドを使えばよいのか,すぐにはわからない.それは,全容をつかめていないせいでもある.そこで,SHELXLについてのこの3回目の解説では,コマンド群の全体を見渡してから,コマンド一般についての入力方法を説明する.また,実際問題として結晶溶媒が乱れているときに,最近の論文ではどのように取り扱われているのか調査した結果を紹介する.最後に,コマンドの使い方に関してわかりにくい点などをQ&Aとしてまとめた.2.コマンドの一覧各コマンドのおおまかな内容を以下に示す.なお,コマンドの分類や配置の順番は,SHELXL97のマニュアル1)に準拠した.コマンドには,常に使うものと特別な場合にだけ使うものとがある.そこで,必要に応じて使うコマンドには(*),特殊な場合に用いるコマンドには(**)の記号を付けた.また,主に高分子の構造解析用のコマンドには(M)を,SHELXL2013以降新たに追加されたものには(○)を付けた.そして参考のために,SHELXL97には存在したがSHELXL2013では削除されたコマンドには(#)を付けて最後にまとめた.(1)結晶データなどの基本的な入力TITL:物質名などのタイトル.CELL:波長と格子定数.ZERR:Zと格子定数の標準偏差.LATT:結晶格子の型と対称心の有無.SYMM:対称操作.SFAC:原子散乱因子(通常は結晶に含まれる各元日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)素の記号).○**NEUT:中性子回折データを解析するときの条件設定.**DISP:異常散乱項と吸収断面積(特殊な線源のとき).UNIT:単位格子中の各元素の原子数.**LAUE:波長に依存する異常散乱項の入力(ラウエ法など放射光を用いた測定のとき).*REM:コメント行.*MORE:計算の途中結果の印字出力量の制御.END:insファイルなどでのコマンドの入力の終わり.(2)反射データの入出力や補正HKLF:hklファイルからの反射データの読み込み.*OMIT:最小二乗法から除く反射あるいは原子の指定.M*SHEL:精密化に使う反射の分解能(つまり面間隔)の範囲の指定.**BASF:反射データセット間のスケール因子,あるいは双晶の分域の割合.**TWIN:双晶操作.○**TWST:反射データの完全性の計算に用いる双晶の分域番号の指定.*EXTI:消衰効果の補正.**SWAT:バルク溶媒の補正.○**ABIN:連続して乱れた結晶溶媒の影響を補正するために,プログラムPLATON/SQUEEZEにより計算した部分構造因子の読み込み.○MANSC:異方性のスケーリング.○M*ANSR:ANSCの6つの変数の標準偏差の指定.*MERG:反射データの平均.*LIST:反射データや構造因子のfcfファイルへの出力.(3)原子リストと拘束**SPEC:特殊位置に原子が存在すると見なす条件の設定.MRESI:特定の残基に属する原子の組の指定.*MOVE:これに続く原子座標の平行移動や反転など211