ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

クリスタリットシクロパラフェニレンCycloparaphenylene多数のベンゼン環がパラ位で環状に連結した含歪みπ共役化合物.カーボンナノチューブはそのカイラリティによりジグザグ,アームチェア,ラセンの3種類に大別されるが,CPPはアームチェアカーボンナノチューブの最小の環状ユニットである.また,CPPの構造はC 60の構造中にも見られる.CPPの合成検討は1934年にはすでに行われていたものの,実際にその合成が達成されたのは2008年である.以降,さまざまな環サイズのCPPや類縁体の合成とそれらの物性,機能が報告されており,世界中で研究が行われている.(京都大学化学研究所岩本貴寛)フラーレンピーポッドFullerene Peapodカーボンナノチューブ内にフラーレンが包接されたハイブリッドナノ物質.この構造はカーボンナノチューブの鞘の中にフラーレンの豆が入った構造に見えることからピーポッド(さやえんどう)と名付けられた.1998年にC 60が包接されたピーポッドが初めて報告されて以降盛んに研究が行われている.現在では前処理をしたカーボンナノチューブとフラーレンを真空下400~500度で数日間加熱するという単純な操作で80%以上の収率で合成可能である.C 60のみならず,高次フラーレンや金属内包フラーレンが包接されたフラーレンピーポッドが現在では知られている.ピーポッドは空のカーボンナノチューブとは異なる電子物性をもつことからトランジスタやダイオードなどの次世代ナノエレクトロニクス材料や量子コンピュータなどさまざまな分野への応用が期待されている.(京都大学化学研究所岩本貴寛)トランスサルファソームTranssulfursomeに直接付加する直接合成経路と,いったん間違っているアミノ酸をtRNAに付加し,その後に付加されたアミノ酸を正しいものに校正する間接合成経路が存在する.本誌で取り上げた一部分のメタン古細菌のCys-tRNA Cys合成は間接合成経路によるものである.トランスサルファソームは私たちのグループにより発見され,命名された,2段階反応の間接合成経路でCys-tRNA Cysを合成する複合体である.2段階反応の中間体を遊離させないように制御因子SepCysEのN末端ドメインが,第1と第2段階の反応を触媒する2つの酵素(SepRS,SepCysS)と結合し,トランスサルファソームが形成される.このトランスサルファソームでは,まず,Sep-tRNA Cys合成酵素SepRSにより,ミスチャージしたSep-tRNA Cysが合成される.その後,SepCysSにより,合成されたSep-tRNA CysがCys-tRNA Cysに校正される.(北海道大学大学院先端生命科学研究院姚閔)ネイティブ-ページNative-PageNative-Pageはタンパク質を検出するポリアクリルアミドゲル電気泳動(Poly Acrylamide Gel Electrophoresis:PAGE)の一種である.通常,タンパク質の検出を目的として最も頻繁に利用される実験手法であるSDS-PAGEと異なって,Native-PAGEは,泳動サンプルを変性させず,天然状態のままポリアクリルアミドゲルに電気泳動する.この場合には,ゲル内でのサンプルの移動速度は分子量・形のほか,タンパク質の等電点に強く依存する.よって,タンパク質間,あるいはタンパク質と核酸の相互作用を調べるためによく使用する実験手法である.しかし,Native-PAGEの欠点として,天然状態のサンプルの性質が移動度に影響するため,泳動バンドの位置を予測することが困難であり,また,泳動バッファーおよびゲルの組成をサンプルごとに十分に検討する必要がある.(北海道大学大学院先端生命科学研究院姚閔)アミノアシルtRNAの合成には正しいアミノ酸をtRNA日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)255