ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

姚閔,中澤祐人SepRSに結合するときに,それぞれのモル数はSepRS:SepCysE(NTD)=4:4;SepCysSに結合するときに,それぞれのモル数はSepCysS:SepCysE(NTD)=2:2;SepRSとSepCysSに結合するときに,それぞれのモル数はSepRS:SepCysS:SepCysE(NTD)=4:4:4となる.次に,Native-PageによってSepCysEのN,C末端ドメインのそれぞれとtRNA Cysとの結合実験を行った(図5).その結果,SepCysE(NTD)がtRNAと結合しないのに対して,SepCysE(CTD)はtRNAと結合することがわかった.以上の結果は,SepCysEのNTDとCTDがそれぞれ単独で異なる機能を有することを示唆している.つまり,SepCysEのNTDが2個のタンパク質SepRSとSepCysSに結合し,3者複合体を形成する機能をもつのに対して,SepCysEのCTDはtRNA Cysと結合し,アミノアシルCystRNACysを合成する際に,tRNAをSepRSからSepCysSに運ぶ役割を担うと考えられる.5.トランスサルファソームによるCys-tRNA Cysの合成図4ゲルろ過によるタンパク質間の結合実験.(Bindingexperiment between proteins.)(a)SepCysE(CTD)とSepRS,SepCysSの結合実験.(b)SepCysE(NTD)とSepRS,SepCysSの結合実験.SepCysS-SepCysE複合体の構造解析,およびSepCysEの機能解析の結果は,SepRS,SepCysS,SepCycEが3者複合体を形成していることを示唆しており,この複合体が中間体Sep-tRNA Cysを遊離させないようにしてCystRNACysを合成すると考えられる.私たちはこの複合体をtranssulfursome(トランスサルファソーム)と名付けた.さらに,この複合体の形成を検証するため,X線小角散乱(SAXS)実験を用いて,溶液中の3者複合体の形成を調べた.SAXS実験から得られた散乱曲線からシミュレーションした3者複合体のモデルまでは辿り着くことができなかったが,考えられるいくつかのモデル構造から散乱曲線をシミュレーションし,SAXS実験の散乱曲線にフィッティングした結果,図6に示しているような最も一致するモデル(図6の右上)を得た.さらに,これまでに得られた構造,および生化学実験の結果を合わせて,トランスサルファソームによるCys-tRNA Cysの合成の機能を下記のように提案することができた(図7).まず,SepCysE(NTD)はSepRSとSepCysSを結合することで図5Native-Pageによるタンパク質とtRNA間の結合実験.(tRNA binding experiment of SepCysE(NTD)andSepCysE(CTD).)左:SepCysE(CTD)とtRNA Cys;右:SepCysE(NTD)とtRNA Cysの結合実験.図6SAXSによる溶液中のトランスサルファソーム構造解析.(SAXS analysis of transsulfursome.)シミュレーション用のモデルはSepRS(緑)とSepCysS(青)-SepCysE(赤)複合体の対称軸を一致させるように作られた.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.248日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)