ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

システイニルtRNAを合成するトランスサルファソームの分子基盤図3SepCysS-SepCysE複合体の結晶構造(3WKR).(The crystal structure of SepCysS-SepCysE complex.)(a)SepCysS-SepCysE複合体の全体構造.(b)SepCysSとSepCysEの相互作用の詳細.SepCysSとSepCysEをそれぞれ黄/紫色とピンク/赤で示す.SepCysのK234およびそれと共有結合しているPLPをスティックで示す.(c)SepCysS-SepCysE複合体とSepCysS単体(水色)構造の比較.複合体SepCysSとSepCysEはそれぞれ黄色のリボンとピンクのサーフェス表示で示している.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.3.SepCysS-SepCysE複合体の構造得られたSepCysS-SepCysE複合体の構造は,SepCysSの2量体とSepCysEの2量体からなり,ゲルろ過の結果と一致している.電子密度マップが不明瞭であったため,SepCysEの214残基のうち,N末端の79残基しか構築することができなかった(図3a)が,結晶化途中にSepCysEが分解されているかどうかを確認するため,SepCysS-SepCysE複合体の結晶を電気泳動したところ,SepCysSとSepCysEのそれぞれの全長バンドが現れた.よって,C末端が見えなかったことは,SepCysEのC末端がフレキシブルのため,電子密度マップに現れないと考えられた.SepCysEのN末端I34-F102残基の領域が2つの長いα-helicesを形成しており,SepCysSとの相互作用は,ほとんどN末端側のα-helix(D45-K66)にある(図3b).複合体中のSepCysSはA. fulgidus由来の単体構造と同様,発現系から捕獲したPLPを活性部位にある残基K241に結合しており,活性部位の構造もよく似ている.これはSepCysEとの結合はSepCysSの活性にあまり影響を及ぼさないことを示唆している.また,全体構造もよく似ており,688残基のCαのRMSDは1.1 Aであるが,C末端側のK295-K396の部分だけは少しSepCysE側へ動いていた(図3c).この部分はtRNAのアクセプターステムに結合すると推定されているので,SepCysEとの日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)結合はSepCysSの大きな構造変化を引き起こさないが,SepCysSとtRNAの結合には影響があると考えられる.4.SepCysEの機能解析得られたSepCysS-SepCysE複合体の構造では,SepCysEのN末端のみ可視化できることは,SepCysEがN末端ドメイン(NTD)とC末端ドメイン(CTD)の2つのドメインから形成されていることを示唆しているので,SepCysEはドメインごとに機能することが考えられる.したがって,われわれは構造情報に基づいて,SepCysEの1-103残基のNTD(SepCysE(NTD))と104-213残基のCTD(SepCysE(CTD))を作製し,それぞれの機能解析を行った.まず,ゲルろ過クロマトグラフィーを用いてタンパク質間の結合実験を行った.その結果,図4に示したように,SepCysE(CTD)がSepRSとSepCysSのどちらにも結合しないのに対して,SepCysE(NTD)は両タンパク質のそれぞれに結合するだけではなく,さらに,両タンパク質と同時に結合した.このことは,SepCysE(NTD)が異なる結合部位を用いて,SepRSとSepCysSそれぞれに結合していることを示唆している.興味深いことに,SepCysE(NTD)がSepCysEの2量体を形成するドメインであり,単独に精製する場合には,溶液中のSepCysE(NTD)が2量体になっているが,結合するパートナーに応じて多量体を形成する.つまり,247