ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

ボツリヌス菌由来ヘマグルチニンの立体構造図4B型HAの結晶構造.(Crystal structure of type B whole HA.)(a)HAの全体構造.黒色の矢頭でHA1のガラクトース結合部位,白色の矢頭でHA3のシアル酸結合部位を示す.(b)HAのプロトマーの構造.HAはプロトマーのホモ三量体により構成される.(c)HAの温度因子(B-factor).線が太くまた赤色に近いほど温度因子が高いことを表す.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.既報のD型HA1-2(PDB ID:2E4M)17)とB型HA3 23)の結晶構造をサーチモデルとして,分子置換法で位相決定を行った.初めに分子量の大きいHA3の位相を決定し,Parrot 24)を用いて電子密度図の改良を行いながらHA2,HA1のN末端ドメインおよびC末端ドメインの順に構造決定した.精密化ではRefmac5 25)を用いてweightmatrixを調整して精密化を行うことで,R=20.2%,R free=25.1%の信頼性の高い立体化学的にも正しい構造を構築することができた.4.HAの立体構造図5 HAの結晶中でのパッキング.(Crystal packing ofwhole HA.)黒色実線で単位格子を示す.物理的なダメージを抑えるため,抗凍結剤濃度を20分ごとに1%ずつ上昇させた.また,終濃度の抗凍結剤中に結晶を一晩浸透させて脱水処理を施した.この結晶を用いてSPring-8 BL44XUでX線回折実験を行った結果,3.5 A分解能の回折データを収集した.本結晶の空間群はP6 322,格子定数はa=b=324.7 A,c=117.6 A,α=β=90°,γ=120°,溶媒含有量は79.7%であった(図5).得られた回折データを用いて,PHASER 22)により日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)HAは12分子から構成され,中心から放射状に3本の脚が広がるトリスケリオン(三脚巴)様の立体構造であった(図4a).結晶構造からHAはHA1:HA2:HA3が6:3:3のストイキオメトリーで結合した470 kDaの分子であることが明らかになった.また,HAはHA1:HA2:HA3が2:1:1で結合した“y”字型のプロトマー(図4b,c)の三量体であり,本結晶では非対称単位中に1分子のプロトマーを含んでいた(図5).HA1は2つのβ-trefoil構造がα-helixのリンカーで繋がれたダンベル様の構造をもち,二量体を形成してHA2と結合していた.また,本結晶構造ではHA1のC末端ドメインは温度因子が高く(主鎖原子の平均がおよそ150 A 2,図4c),構造に揺らぎをもっていた.HA2は1つのβ-trefoil構造をもち,HA1とは疎水性相互作用を主として,HA3とはHA3-ivドメインを介して疎水性相互作用およびその疎水性領域を挟む235