ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

大場茂トさせない方法がある.それにはDAMPコマンドを使って,次のようにすればよい.L.S. 1DAMP 0 0ただし,ACTA指令は除く(あるいは先頭にREMを入れてコメント行にしておく)必要がある.そうしないと,lstファイルに次のようなエラーメッセージが出て止まってしまう.** Second DAMP parameter too small for ACTA **なお,「DAMP 0 0」により,スケール因子や非水素原子の座標および温度因子は元のままであるが,計算し直された水素原子の座標は0.000001~2程度変化し得る.Q9.分子が化学的に2回軸をもち,それが結晶学的な対称性と一致している.分子内でのベンゼン環(C3~C8)の2面角を計算するために,次のように指定したが等価位置のベンゼン環の最適平面を計算してくれない.EQIV $1 2-X, 2-Y, ZMPLA 6 C3 > C8MPLA 6 C3_$1 > C8_$1A9.原子の連続番号の指定が,等価位置にまで有効とは限らない.次のように指定すれば計算してくれるはずである.MPLA 6 C3_$1 C4_$1 C5_$1 C6_$1 C7_$1 C8_$1_Q10.三斜晶系で空間群P1,Z=4で2分子独立であるが,分子構造はキラルであり一方が他方の鏡像となっている.それらの構造を比較するために,片方の分子だけを等価位置に移動させるにはどうすればよいか.A10. MOVEコマンドを使うことで,モデル構造の初期座標の一部(あるいは全部)を並進ならびに反転させることができる.コマンドの入力形式は,次のとおりである.MOVE dx[0]dy[0]dz[0]sign[1]このMOVEコマンドの次に続く原子の座標は,次式に従って変換される.? x ?? ?y?? z ??new? x ?? ?= siny?? z ??old?dx?? ?+dy(2)? ??dz?つまり,引数を何も入れないで「MOVE」とすると,defaultで恒等変換を指定したことになる.例えば,分子2を(1-x,1-y,1-z)の等価位置に移動させるには,次のように指定することで行える.すなわち,insファイルで,MOVEコマンドを,2カ所に入れる.(分子1の原子座標)MOVE 1 1 1 -1(分子2の原子座標)MOVE(結晶溶媒などの原子座標)なお,MOVEコマンドは,次のMOVEコマンドが来るまで有効である.よって,分子2以降の原子位置を動かさないようにするために,何の引数ももたない「MOVE」コマンドを分子2の座標データの終わりに入れている.Q11. insファイルに入れてもresファイルには残らないコマンドがあるが,どうしてか.A11. HFIXやANISそしてMOVEは,resファイルには残らない.これらはいずれも原子リストを操作するコマンドであり,いったん操作が完了すると,くり返して使う必要がなくなるからである.5.3コマンドの使い分けQ12.構造が乱れているときに,束縛のかけ方の基本戦略がわからない.例えば,結合距離を抑制する場合に,DFIXとSADIをどのように使い分けるのか.A12.分子構造の炭化水素鎖以外の部分が乱れている場合には,対応する部位の結合距離が似た値になるように,SADIコマンドで抑制する.これは,標準的な結合距離を仮定しなくてもよいので,都合がよい.トルエン9)やアセトン10)などの結晶溶媒が乱れているときは,DFIXコマンドで理想的な幾何構造を保つように抑制する.もちろん温度因子についてもSIMUや場合によってはEADPの束縛が必要となってくるであろう.文献1)http://shelx.uni-ac.gwdg.de/SHELX/2)Cambridge Structural Database(CSD, Version 5.36, 2014 Nov); C.R. Groom and F. H. Allen: Angew. Chem. Int. Ed. 53, 662(2014).3)H. O. Sorensen, M. Magnussen and N. Stuhr-Hansen: Acta Cryst.C61, o503(2005).4)X.-L. Zhang, S.-R. Zheng, Y.-R. Liu, X.-L. Zheng and C.-Y. Su:Acta Cryst. C61, o533(2005).5)M. M. Ghorab, M. S. Al-Said, A. A. Al-Mishari, C. K. Quah and H.-K. Fun: Acta Cryst. E68, o2396(2012).6)B. R. D. Nayagam, S. R. Jebas, P. S. Grace and D. Schollmeyer:Acta Cryst. E65, o129(2009).7)K. G. von Eschwege and A. Muller: Acta Cryst. E65, o2(2009).8)M. K. Rauf, A. Badshah, M. Bolte and Imtiaz-ud-Din.: Acta Cryst.E62, o3553(2006).9)N. Malek, T. Maris, M. Simard and J. D. Wuest: Acta Cryst. E61,o518(2005).10)J. Bojarska, W. Maniukiewicz and L. Sieron: Acta Cryst. C69, 781(2013).プロフィール大場茂Shigeru OHBA慶應義塾大学自然科学研究教育センターResearch and Education Center for Natural Sciences,Keio University〒223-8521横浜市港北区日吉4-1-1Hiyoshi 4-1-1, Kohoku-ku, Yokohama 223-8521,Japane-mail: ohba@a3.keio.jp最終学歴:理学博士(東京大学,1981)専門分野:結晶化学現在の研究テーマ:キラルな化合物の構造と物性218日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)