ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No4

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概要

日本結晶学会誌Vol57No4

SHELXLのコマンドを使いこなそう!BIND 2 3BIND 2 4FVAR 0.198 0.5 0.3 0.2SUMP 1 0.001 1 2 1 3 1 4(途中省略)PART 1C12A………21.0…C13A………21.0…PART 2C12B………-21.0…PART 3C13B………31.0…PART 4C13C………41.0…つまり,末端のC13は3カ所に乱れているので,その占有率の和が1.000(1)になるようにSUMPコマンドで抑制する.また,PART 2と3(あるいは4)が連結していることを,BINDコマンドで指定する.これにより,結合表にC12B-C13Bなどの結合情報が追加されるので,水素原子の導入も問題なく行うことができる.Q6.分子内で(炭素に結合している)水素原子間距離が異常に短いというcheckCIFの警告(Alert B)が出る.その片方の水素はメチル基であったので,D合成のピークをもとに水素の座標を精密化してみたが,結合角が妥当な範囲から外れてしまう.A6.このような場合でも,炭素に結合している水素原子は幾何学的に理想的な位置を保つようにモデル化したほうがよい.つまり,メチル基の水素は「HFIX 137」で導入する.そして,異常接触を避けるために,BUMPコマンドを試してみる.実際に,分子内でメチル基の水素に関連してH…H距離が1.78 AでALERT Bであったとき,「BUMP」を指定したことで1.81 Aへ改善された(ALERT Cへ変わった)ことがある.ただし,R因子はほんの少しだけ増加した.なお,BUMPコマンドを使っても,ALERT Cレベルの水素原子間接触までは除去できないであろう.5.2距離などの計算や原子座標の移動Q7.結合距離のリストにのっていない距離を計算させるには,どうすればよいか.A7.この質問には,2通りの場合が考えられる.まず,原子間の結合距離が,通常よりも長くなっているために結合とみなされていない場合である.そのときは,CONNかBINDコマンドを使ってそれらの原子の対を,結合表に追加すればよい.2番目のケースは,分子間の距離などを計算したい場合である.このときはRTABコマンドを使うことで,結合表とは無関係に距離や角度およびねじれ角などを計算することができる.コマンドの入力形式は次のとおりで日本結晶学会誌第57巻第4号(2015)ある.RTAB codename atomnamesここで,codenameは文字で始まる4文字以内のコード名である.atomnamesには,距離の場合は2原子,角度のときは3原子,ねじれ角のときは4原子を指定する.例えばC77とC23およびその(1-x,1-y,1-z)の等価位置との距離,および関連する角度やねじれ角を計算したいときは,次のようにすればよい.EQIV $1 1-X, 1-Y, 1-ZRTAB DIST C77 C23RTAB DIST C77 C23_$1RTAB ANGL C77 C23 C24RTAB TORG C76 C77 C23 C24RTAB D2CG C77 C23 C24 C25 C26 C27 C28RTAB D2CG H77A C23 C24 C25 C26 C27 C28なお,参考までに上記の最後の2行にはC-H…pの相互作用を調べるために,C77とH77AからC23~C28のベンゼン環の中心(centroid)までの距離を計算する指定も入れた(その場合には,コード名をD2CGとする).なお,D2CG以外は,コード名は任意である.これでSHELXLを走らせると,lstファイルの終わりのほうに次のように出力される.DistanceDIST3.5581(0.0036)C77-C23DistanceDIST12.5065(0.0038)C77-C23_$1Angle ANGL 87.97(0.18)C77-C23-C24Dihedral angle TORG 84.91(0.33)C76-C77-C23-C24Distancesfromfirstatomtocentroidofagroupatoms(D2CG)3.8574(0.0036)C77-[C23 C24 C25 C26 C27 C28](D2CG)2.9818 H77A-[C23 C24 C25 C26 C27 C28]ここで,C77とベンゼン環の中心(CG1とする)までの距離をR,そしてC-HおよびH…CG1距離をr1,r2とすると,C-H…pの角度fは,次式から計算することができる(図5).R 2=r 12+r 22-2r 1 r 2 cosf(1)Q8.論文用に1回CIFを作ったので座標や温度因子などを動かしたくはないが,二面角の計算などを追加で行いたい.しかし,標準偏差を求めるためには最小二乗法を行わざるを得ない.何かよい方法はないか.A8.最小二乗法を1サイクル行い,しかも変数をシフ図5C-H…p相互作用の角度fの計算.(Calculation ofthe angle of C-H…p interaction.)217