ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No1

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概要

日本結晶学会誌Vol57No1

湯本史明,千田俊哉くための基盤としての役割を担っている.3.解析拠点・解析領域における取り組みPDIS事業は,タンパク質の構造解析を中心とした解析拠点(拠点長:若槻壮市・スタンフォード大学/高エネルギー加速器研究機構),低分子化合物スクリーニングや合成展開を行う制御拠点(拠点長:長野哲雄・医薬品医療機器総合機構/東京大学),本事業がかかわるタンパク質構造およびスクリーニングにおけるデータベースの構築を行う情報拠点(拠点長:五條堀孝・アブドラ国王科学技術大学/遺伝学研究所)の3拠点から構成され,それぞれが連携しながら,支援と高度化を進めている.これらの中で筆者らが属する解析拠点は「解析領域(アドミニストレータ:千田俊哉・高エネルギー加速器研究機構)」,「生産領域(アドミニストレータ:高木淳一・大阪大学)」,「バイオインフォマティクス領域(清水謙多郎・東京大学)」の3領域から構成されている.解析領域は,放射光施設Photon Factory(PF)をもつ高エネルギー加速器研究機構の物質構造科学研究所(物構研,代表:千田俊哉),SPring-8をもつ理化学研究所(代表:山本雅貴),SPring-8に超分子複合体用ビームラインをもつ大阪大学(代表:中川敦史),硫黄原子の単波長異常散乱(S-SAD)を使った構造決定法の高度化と支援を進めている北海道大学(代表:田中勲)から構成されている.これらのサイトが協力しながら,放射光X線を使ったビームタイム支援や構造解析支援,およびビームラインの高度化を進めている.本PDIS事業はウェブサイト5)にて常時課題申請を受け付けている.利用希望者から申請書が提出されると,関連する領域のアドミニストレータによる技術審査の後,外部委員から構成される課題選定協議会による科学審査が行われ,採択の可否が決定される(図1).そして,いったん採択されると,PF,SPring-8両方のビームラインにアクセスすることが可能となる(図2).平成26年度途中における採択率は約80%程度となっている.また不採択となった課題でも,再申請は可能である.現時点(2014年12月)では両施設を横断的に利用することができる仕組みはPDIS事業が唯一のものであり,研究の進捗に応じて最適なビームラインを選択しながら最大限に放射光X線を利用できる制度となっている.手法に関しても,X線結晶構造解析とSAXSを組み合わせて相関構造解析を試みる課題申請も積極的に受け入れている.PDIS事業が供するX線結晶構造解析およびSAXSのすべてのビームラインの中からそれぞれの特長を活かしてビームラインを利用することができる.ビームタイムは,PF,SPring-8両施設のビームラインサイエンティストによって構成されるビームタイム調整ワーキンググループ(代表:熊坂崇(JASRI))によって管理されており,PDISにおいて構造解析やビームタイム支援の課題をもっているビームタイム希望者に対し,審査時の点数を参考にしながらビームタイムが分配される.以下に,それぞれのビームラインのPDISで利用可能なビームラインについて簡単に紹介する.PDIS事業において,KEK・物構研と北大は連携しながら,硫黄の異常分散効果を位相決定に用いるS-SAD法による構造解析技術の高度化を行ってきた.現在BL-1A(担当:松垣直宏)6)では,世界的にも最も低エネルギー領域のX線を使ったS-SAD法による構造解析が適用可能になっている.また,BL-17A(担当:山田悠介)7)やWEB申請ワークフロー化実施中約1ヶ月課題選定協議会申請者アドミン事務局審査員事務局支援開始実施者によるコンサルティングアドミニストレータによる技術審査※課題選定協議会によるサイエンスの審査※目標の明確さと妥当性、支援依頼に先立つ準備(先行研究のレベル、実施計画の妥当性)、支援を受けた後の依頼者の研究遂行力等?アドミニストレーター、選定委員、支援実施者のすべてのレベルでコンフリクトの有無に留意外部の有識者(分野を代表される国内研究者)名から構成される。各課題について専門家3名により、下記の観点から採点し(1-5点)、評価コメントもつける。93.0点以上を採択とする。コメントは申請者に返される。評価の観点:生物学・医学研究上の重要性とインパクト図1課題審査の流れ.(Scheme of evaluation process for application.)48日本結晶学会誌第57巻第1号(2015)