ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No1

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概要

日本結晶学会誌Vol57No1

SANSとSAXSを利用した流動と変形による高分子結晶化研究図7(a)250℃で生成させたiPS配向物の偏光顕微鏡像とマイクロビームWAXDマッピング領域,(b)マイクロビームが配向物に照射されたときのWAXD像(上),配向物に照射されなかったときのWAXD像(下).((a)POM picture of oriented objects andmapping area for microbeam WAXD.(b)WAXDpatterns when microbeam was on the oriented object(upper)and out of the object(lower).)編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.図9(a)250℃で生成させたiPS配向物の偏光顕微鏡像とマイクロビームSAXSマッピング領域.(b)マイクロビームSAXSで観察される典型的な3つの散乱パターン.((a)POMpictureoforientedobjectsandmapping area for microbeam SAXS.(b)three typicalSAXS patterns.)編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.図10マイクロビームSAXSの一次元散乱像の円柱モデルによる解析.(1D microbeam SAXS patterns andanalyses by a cylinder model.)Q x方向(a)とQ z方向(b)の散乱パターンの解析結果.実践はモデルによるフィットの結果.図8(a)マイクロビームが配向物に照射されたときのWAXS像から求めた一次元散乱像(破線は非晶からの寄与).(b)配向物中の結晶化度の分布.((a)1D microbe WAXD pattern,(b)distribution ofcrystallinity in the oriented object.)ハローしか観測されない.このことより,配向物中には通常の融点より高い融点をもつ非常に少量の結晶が存在することが明らかになった.ブラッグピークの線巾を求め(図8a),シェラー式から結晶サイズを評価したところ,250℃では(211),(220)方向でそれぞれ14±2.5 nm,12±2.1 nmとなった.大きな揺らぎは結晶サイズの揺らぎによる.また,配向物内部の結晶化度分布をマッピングの結果をもとに評価し,図8bに示す.結晶化日本結晶学会誌第57巻第1号(2015)度は非常に小さいが,5マイクロメートルというビームサイズの範囲内では,配向物内に結晶はほぼ一様分布していた.次に,マイクロビームを用いたSAXS測定を行った.配向物の偏光顕微鏡写真が図9aに示してある.白丸,黄丸,赤丸で示した範囲がマッピング領域である.ほとんどの領域を占める白丸では,何ら観測されないが黄丸では非常に微弱な,赤丸ではかなり強い配向方向に垂直なストリーク状の散乱が観測された.この散乱は流動方向に配向した細長い物質が配向物中に存在することを意味している.これを伸張鎖結晶(シシ)と考え,その形状を長い円柱で近似できると考え,解析を行った.Qz,Q xをそれぞれ流動方向に平行および垂直と定義し(図9b参照),それぞれの方向の散乱強度を円柱の散乱関数でフィットした.結果を図10に示す.それぞれのフィットより,円柱の長さは約140 nm,太さ(半径)9.1 nmと求ま31