ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No1

ページ
33/94

このページは 日本結晶学会誌Vol57No1 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol57No1

軟X線・硬X線・中性子非弾性散乱を用いた銅酸化物超伝導体のダイナミクス研究観測されており,15)電子ドープされた物質のRIXSでの単一スピン反転励起とdd励起の間にあるスペクトル強度は母物質と同じtwo magnon励起によるものとは考えにくい.さらに,母物質のtwo magnon励起はほとんど運動量依存性がないのに対し,図3cに示すとおり,ドープされた物質の励起は,大きな分散がある.x=0.15について,そのピーク位置を図4bにプロットすると,赤い◆のようIntensity [arb. units]Intensity [arb. units]Energy [eV]Intensity [arb. units]210Nd 2-x Ce x CuO 4(a) q || =(0.25,0)x=0x=0.075x=0.15-1 0 1 2 3 4 5Energy [eV](b)-1 0 1 2 3 4Energy [eV](c) x=0.15(0.2,0.2)(0,0)(0.2,0)Momentum q ||(d)L 3 -edgeq || =(0.09,0)x=0.15, q || =(h,0)h=0.20h=0.15h=0.10x=0.18K-edgeq || =(0.10,0)Intensity [arb. units]な運動量依存性になる.スピン励起よりも大きな分散をもってq=(0,0)から立ち上がっていることがわかる.同じものを銅K吸収端RIXSの強度マップの上にプロットすると図6cのようになる.一見してわかるとおり,銅L 3吸収端RIXSで得られた励起の分散(◆)は,銅K吸収端RIXSで得られた励起の分散(?)に滑らかにつながっている.このことから,われわれは両者が同じ起源をもつ電荷励起であると結論づけた.電荷励起,スピン励起のエネルギースケールが,それぞれ移動積分(t=0.3~0.4 eV),交換相互作用(J=0.1 eV)に支配されていることを考えると,電荷励起がスピン励起よりも大きな分散をもち,高エネルギーに現れることは妥当である.最近のエネルギー分解能が改善された銅K吸収端RIXSでは,銅L 3吸収端RIXSで観測された励起と同じエネルギーでの観測がいくらか可能になりつつある.図6dでは,x=0.18について,ほぼ同じ運動量で銅K吸収端RIXSと銅L 3吸収端RIXSのスペクトルを比較した.銅K吸収端RIXSのエネルギー分解能は250 meVで銅L 3吸収端RIXSとほぼ同じである.赤長破線で示す電荷励起は,両スペクトルでほぼ同じエネルギーにあることがわかる.3.3ホールドープ系との比較以上のように,スピン励起についてはINSと銅L 3吸収端RIXS,電荷励起については銅L 3吸収端RIXSと銅K吸収端RIXSを組み合わせて測定することで,電子ドープ系銅酸化物超伝導体のサブeV領域におけるスピン・電荷励起の全体像を明らかすることができた.これまでにわかっているホールドープ系の結果と合わせて図7に励起の概略をまとめた.ホールドープ系のおよそ0.15 eV以上の高エネルギースピン励起は,最近の銅L 3吸収端RIXSでその詳細が明らかになった.12),16)ドーピングにより幅が広がるという点は電子ドープ系と共通であるものの,その運動量依存性は母物質のスピン波からほとんど変化しておらず,ドーピングにより高エネルギーにシフトする電子ドープ図6-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2Energy [eV]Nd2?xCexCuO4の銅K吸収端RIXS.(CuK-edgeRIXSofNd2?xCexCuO4.)(a)q||=(0.25,0)におけるドーピング依存性.(b)超伝導組成(x=0.15)の運動量依存性(c)x=0.15のRIXS強度マップ.赤い?と◆は,それぞれ銅K吸収端RIXS,銅L3吸収端RIXSで得られた電荷励起のピーク位置を表す.(d)高エネルギー分解能での銅K吸収端RIXSと銅L3吸収端RIXSの比較.(b)と(d)中の線はフィッティングによる解析結果で,詳細は本文中に記す.赤長波線の棒は電荷励起のピーク位置を表す.編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.図7EnergyEnergyelectron dopingcharge excitationsspin excitationsMomentumspin excitationsMomentumhole dopingEnergycharge excitationsspin excitationsMomentum銅酸化物超伝導体におけるスピン・電荷励起,およびそのドーピング効果.(Spin and charge excitations incopper oxide supeconductors and their doping effect.)日本結晶学会誌第57巻第1号(2015)25