ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

杉島正一図4架橋実験によるCPRとHO-1の相互作用解析.(Cross link analysis of the interaction between CPR and HO-1.)(a)結晶構造中での?TGEE(黒)とHO-1(白)の相互作用界面.システインに変異させた箇所はsphereモデルで,補因子とヘムはstickモデルで示す.(b)HO-1とCPR,ヘム, NADP +の混合物のSDS-PAGE.染色はクマシーブリリアントブルーで行った.*でジスルフィド結合による架橋がかかったバンドを示す.((b)は文献7)より転載)図5 ?TGEE-ヘム-HO-1複合体の静電ポテンシャル.(Electrostatic potentials on the surface of ?TGEEheme-HO-1complex.)正に帯電している領域を青,負に帯電した領域を赤で示す.右側の図は?TGEEとHO-1の相互作用界面を示す.(文献7)より転載)編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.ヘムポケットから遠くはなれているが, CPRと相互作用するもう1つの領域であり,ヘムポケット周辺と連関したCDループの構造揺らぎはアポHO-1がCPRに結合できないことと関連していると考えている.4.CPRからHOへの電子伝達機構?TGEE-ヘム-HO-1複合体中には, NADP + , FMN, FAD,ヘムがそれぞれ一分子ずつ結合していた(図2).このうち,ヘムとFMNは近接していたが, FADはFMNやヘムから20 A程度離れた位置に結合していた.このことは,FMNからヘムへは直接電子が受け渡されそうだが, FADからFMNへの直接の電子伝達は難しいことを示唆し,?TGEEがヘム-HO-1と強く結合するにもかかわらず,ヘム-HO-1への電子伝達が遅い事実と一致する.それでは,野生型CPRではどのようにしてHO-1に電子を受渡しているのであろうか??TGEEではopen型が安定化されているが,野生型CPRはclose型とopen型の両方のコンフォメーションを取りうる. close型ではFADとFMNが近接しており, NADPH→FAD→FMNと電子伝達が可能な空間配置となっている.また, X線小角散乱21)およびイオンモビリティ質量分析22)の結果から, CPRの酸化還元状態に応じて, close型とopen型の量比が変化し,open型は還元型CPRで増加することが示唆されている.このことは, close型でFMNが還元された後には, open型が安定化され,ほかのヘムタンパク質と相互作用できる形となることを示唆する.これらのことを考慮して,われわれは図6のようなCPRからHOへの電子伝達機構を提唱した.すなわち,1)酸化型CPRはclose型が主となり,NADPHが結合すると, NADPH→FAD→FMNと分子内で電子伝達され, FMNが還元される.2)還元型CPRはopen型が主となり, open型CPRはヘム-HO-1複合体と結合する.3)HO-1と結合すると, FMNからヘムへと電子伝達され,ヘムは還元, FMNは酸化される.4)FMNの酸化に伴って, CPRはclose型が主となる.5)close型CPRに構造変化すると, FAD結合ドメインとHO-1が衝突するので, HO-1はCPRから解離する.この酸化還元に伴うCPRの構造変化のトリガーは不明であるが, rat CPRとhumanCPRでFMNのフラビン環近傍のグリシンのコンフォメーションが異なっており,この違いはX線によるFMN396日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)