ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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概要

日本結晶学会誌Vol56No6

武藤俊介,巽一厳, Jan RUSZ図5(a)古典分子動力学によって生成した理論計算のための体心立方晶多結晶鉄のスーパーセル.(b)このスーパーセルで計算された電子回折図形(1 mrad~0.25 g 110~1.25 nm ?1).(c)z軸方向のEMCD信号強度(L 3ピーク強度に対する割合)の回折面上の分布.((a)Model bcc Fe polycrystalline supercellproduced by a classical molecular dynamicssimulation.(b)Calculated electron diffraction patternof the cell.(c)The theoretical EMCD signal intensitydistribution.)図7多結晶鉄および多結晶NiO薄膜に対して得られた差スペクトルの例(式(6, 7)の基準を満たし,符号を揃えて重ねたもの).(Example of the differencespectra for a polycrystalline bcc iron and NiO films.Only spectra that met the criteria(Eqs.(6)&(7)are shown).)(a)BCC多結晶鉄薄膜.(b)NiO多結晶薄膜.図6本実験セットアップと得られるデータ形式の模式図.(Schematic drawing of the present experimentalsetup and the data obtained.)(ADF:環状暗視野, PL:投影レンズ). EELS検出器絞りはPLクロスオーバー位置に置かれる.そこで前節で述べたようなさまざまな制約を緩和し,定量的なEMCD信号を抽出するために,図6に示すような測定スキームを案出した:(i)超高圧電子顕微鏡の利用:図4のように正味の信号強度比が向上し,かつ動力学効果の抑制に効果的である.(ii)ナノサイズのBCC鉄多結晶体薄膜:非晶質窒化ケイ素膜上に30 nmの多結晶鉄を蒸着し, 3 nm厚のアルミキャップ層で酸化を防止.(iii)ナノプローブで試料上を走査し,ランダム方位の結晶粒から回折面の特定位置のFe-L 2, 3スペクトルを収集することによって強弱正負さまざまなEMCD信号強度を含むスペクトルが多数得られたことになる.詳細な実験条件は文献13)に載せた.取得された各スペクトルからまずプリエッジバックグラウンドを差し引き,ポストエッジバックグラウンドで規図8平均EMCD信号(赤●)および総和則を適用するための積分(黒線).(Averaged EMCD signal(reddots)anditscumulative sum(black line), evaluated,in order to apply the sum rule.)編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.格化する.式(1)によると規格化によってスペクトルの非磁性成分が揃えられ,収集された任意の2つのスペクトルの差し引きによって第2項の磁性成分が抽出される.ここでN本のスペクトルからNC 2=N(N-1)/2本の差スペクトルが得られる.しかし前節で述べた理由によって,次のような選択基準によって有意なS/N比をもつデータだけをより分ける:∫I at L peak I at L peak?σ?σ( EdE ) ? ?σ( EdE ) < 0( )? ( )<3∫L3 L2?σ2 0(6)(7)式(6)は, EMCD信号のL 3およびL 2ピーク位置における積分強度の符号が逆である条件に,式(7)は各ピーク位置での信号強度の符号が逆であることに対応する.このようにして1セット225本(15×15点)の生スペクトルから得られる25,200本の差スペクトルに式(6),(7)の条390日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)