ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み化学における結晶学(現在・過去・未来)―世界結晶年2014―東京工業大学大学院理工学研究科関根あき子Akiko SEKINE: Crystallography in Chemistry(Present, Past and Future)1.企画講演会:世界結晶年企画「化学における結晶学(現在・過去・未来)-世界結晶年2014-」日時:2014年3月27日9:30~12:00場所:日本化学会第94春季年会S6会場(名古屋大学東山キャンバス)主催:日本化学会2.プログラム趣意説明植草秀裕(東工大院理工)世界結晶年の意義坂田誠(JASRI利用促進部門)現代結晶学誕生100年と今後の展開大橋裕二(東工大名誉)分子の動きを見る化学結晶学植草秀裕(東工大院理工)生物化学における結晶学栗栖源嗣(阪大蛋白研)粉末中性子線回折で観たBiNiO 3の圧力誘起サイト間電荷移動と巨大負熱膨張への展開東正樹(東工大応セラ研)3.概要本年は世界結晶年を記念した行事が多く行われたが,この特別企画講演会は特に化学分野での世界結晶年記念行事として行われた.日本化学会では春季年会でさまざまな特別企画講演会が行われるが,その1つとして世界結晶年企画が採択されたことは,日本化学会でも世界結晶年が意識されている現れだったのかもしれない.実は,日本化学会の機関誌「化学と工業」1月号でも,世界結晶年記念の特集が組まれており,講演された先生方がご執筆されていた.企画提案をされた植草先生に聞いたところ,「化学と工業」の企画と,年会の特別企画は連動した企画であった,との裏話であった.なお,「化学と工業」では,記念記事以外にも,巻頭言(東京理科大学総合研究機構黒田玲子先生), Gallery(株式会社リガク虎谷秀穂先生,アジレント・テクノロジー株式会社佐藤孝氏)などで,結晶学に縁の深い先生方がご執筆されており,世界結晶年記念号としてよい企画であった.会場は200名以上が入れる階段教室で,徐々に席が埋まっていき,盛会に行われた.冒頭で企画担当の植草先生より,化学は結晶学の重要分野の1つであり,また化学の中の多くの部分で結晶構造の知識が必要あるという化学と結晶学のかかわりが紹介された.したがって本講演会は,最初に世界結晶年,結晶解析100年という講演,次に化学の中の各領域(化学,生物,材料)という順番(これが現在・過去・未来に相当するそうである)でプログラムが組まれたとのことであった.最初のご講演は,日本結晶学会会長(当時)の坂田誠先生(JASRI)より,世界結晶年の意義というタイトルで,結晶学の私達の生活への広がりを含めて,世界結晶年を紹介された.日本においては「世界“結晶学”年」でなく「世界“結晶”年」となったことにも大きな意味があるとのことであった.また,生活における結晶学では,宝石から,世界最大の結晶,浅田真央選手まで多くの例が登場し,楽しく講演を聴くことができたが,お持ちのスライドの1/3程度しか紹介されていらっしゃらないそうで,聴けないお話があったのは少し残念なことであった.次のご講演は,元IUCr会長の大橋裕二先生(東工大名誉教授)によるご講演であった.われわれが知っているラウエ,ブラッグ父子の名前も当然登場したが,彼らの仕事の本質を詳しく説明していただいたのは印象的だった.また,日本における結晶学の偉人寺田寅彦・西川正治についてももちろんお話しくださった.後半は結晶構造が化学のさまざまな領域で用いられる様子から,放射光,中性子回折を含む現在の隆盛と将来の方向性までお話しいただき,貴重なご講演であった.ここから後は,化学,生物,材料方面から,やや専門的な講演となった.ただし,講演者の先生方は,専門でない化学分野の学生を意識して講演をご準備されたようで,それぞれの領域で,難しい話は避けて比較的幅広いトピックスを取り上げる形式だったため,専門分野外の者にも理解しやすい講演であった.植草先生は,化学に関係する結晶学のトピックスとして,光励起構造,結晶中の分子運動,光化学反応を取り上げていらした.これらのテーマは,日本結晶学会誌2013年1号特集号でも取り上げられている,化学結晶学では馴染み深いものであった.栗栖先生は,化学の学生にはやや高度なタンパク質結晶学をその歴史的な話や手法を含めてわかりやすくお話しされた.中には解析された中で最も大きいタンパク質分子というものも紹介された.さらにご専門の光合成に関連したタンパク質の話も登場し,実際に光エネルギーを化学エネルギーに変換364日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)