ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み熊本ゆかりの寺田寅彦と世界結晶年記念企画「結晶学の始まりと今」熊本大学吉朝朗,山縣ゆり子,池水信二,磯部博志Akira YOSHIASA, Yuriko YAMAGATA, Shinji IKENAGA and Hiroshi ISOBE: TheReport on Kumamoto University Special Events IYCr2014:“Crystallography Now andin the Beginning”and“Torahiko Terada in Kumamoto”1.はじめに2013年と2014年に熊本で行った世界結晶年記念行事について報告します. 2012年7月の国際連合の総会にて,2014年を世界結晶年として制定することが決まり,国際結晶学連合(IUCr),ユネスコ,国際科学会議などの支援を得て記念事業が世界の各地で行われています.ラウエがX線による結晶の回折現象解明により1914年に,ブラッグ親子が食塩の結晶構造の解明により1915年に,ノーベル物理学賞を受賞しました.日本でも,寺田寅彦がX線回折の実験成果をブラッグより先に「X線と結晶」としてNature誌(1913)に公表しています.また,西川正治が,世界に先駆けて繊維や薄板などのX線回折現象をProc.Tokyo Math-Phys. Soc.誌に(1913)に公表しています.その後100年,結晶学はすべての科学分野で重要な貢献を重ね,現代の科学技術・産業の土台を支えています.寺田寅彦と彼の弟子である水晶研究で著名な古賀一策は,熊本大学の前身である旧制五高の卒業で,熊本には幸い先の大戦の戦火を免れた当時を偲ばせる学び舎やランプの上昇気流を用いるドラフト,下宿跡などが残っています. 2013年度には結晶学会年会が, 2014年度には鉱物科学会年会が,熊本大学で行われる機会を利用して,若手研究者・学生対象のシンポジウムと高校生・教員・一般市民対象の体験実験・講演会を熊本大学にて世界結晶年企画として実施しました.広く市民や学生,高校生,中高教員に参加を促すため,教育委員会や理科教員の部会などの共催を取り,日曜日と休日に実施しました.熊本県下のスーパーサイエンスハイスクール(SSH高)事業実施高校3校の企画としても採用され,多くの理科好き生徒の参加があり,参加者数は,それぞれ300名に及びました.講演者へのたくさんの質問と体験コーナーでの歓声など会場は熱気に満ちていました. SSH高の教員からは生徒たちの将来の目標と深く学ぶためのモチベーション向上に役立ったとの報告がありました.企画の内容は下記のとおりです.主催:熊本大学大学院薬学教育部,熊本大学自然科学研究科共催:国際結晶学会(IUCr),日本結晶学会,日本鉱物科学会,日本学術振興会後援:熊本県教育委員会,高教研理科部会場所:熊本大学黒髪キャンパス熊本大学実行委員:吉朝朗,山縣ゆり子,池水信二,磯部博志,西山忠男2013年度10月13日講演会と博士とのふれあいコーナー:「タンパク質複合体(光反応中心)の3次元構造解析」1988年ノーベル化学賞受賞者Deisenhofer博士10月14日講演:「寺田寅彦とその弟子たちの偉業」松本生(金沢大学)「結晶の対称性の数学」Massimo Nespolo(フランス,ロレーヌ大学)「5回対称性と準結晶,ノーベル賞受賞の裏話」杉山和正(東北大学)「探査器ハヤブサのお土産と結晶学」山明(京都大学)「光合成のなぞを解く鍵“マンガンクラスター”の分子構造」神谷信夫(大阪市大)体験実験:「鉱物と新物質の不思議な性質」,「46億歳の鉱物と火星の隕石に触れよう」,「ダイヤモンドのすばらしい性質」,「機2.企画の概要タイトル:熊本ゆかりの寺田寅彦と世界結晶年記念講演会「結晶学の始まりと今」松本先生による講演の様子.寅彦の下宿.日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)359