ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組みはな教授を魅了した大地の結晶―北川隆司鉱物コレクション200選―国立科学博物館地学研究部宮脇律郎,門馬綱一Ritsuro MIYAWAKI and Koichi MOMMA: Ryuji Kitagawa Mineral Collection1.北川隆司鉱物コレクション故北川隆司教授(広島大学)の専門分野は,環境と密接にかかわる微小結晶の粘土鉱物で,その研究成果は,石綿などの環境問題や,地滑りなどの防災問題まで幅広く展開されています.その研究のかたわら,美しく大きく成長した結晶を,個人のコレクションとして収集していました.長年にわたり集められた標本は,実に2,000点を超える一大コレクションとなりました.北川隆司鉱物コレクションの特色は,鉱物学の専門知識に裏打ちされながらも,収集家の心情が注がれているところにあります.このような「専門性」と「趣味性」を兼ね備えた個人コレクションは,国内では類を見ないと言っても過言ではありません.2.巡回展示とIYCr2014へのかかわり北川教授は2009年に60歳でその生涯を閉じました.鉱物の魅力を広く伝えたいと考えていた北川教授の遺志を受け,ご遺族,研究室卒業生のご協力の下,そのコレクションの中から200点余りを選抜し,日本粘土学会,日本鉱物科学会との共催により, 2013年5月に,広島市こども文化科学館で巡回展示が始まりました.中津川市鉱物博物館,国立科学博物館,糸魚川市フォッサマグナミュージアム,富士宮奇石博物館と巡り,年明けからは,日本結晶学会も共催に加わり,世界結晶年の企画事業となりました.IYCr2014の本年には,千葉県立中央博物館,東北大学総合学術博物館,豊橋市自然史博物館,久慈琥珀博物館,山梨ジュエリーミュージアム,名古屋市科学館,香川大学博物館で公開され,現在,大阪市立科学館で企画展「THE結晶展~これが結晶,これぞ結晶~」の一部を構成しています.今後,愛媛県総合科学博物館(2/14~4/5),北九州市立自然史・歴史博物館(4/11~7/12)富山市科学博物館(7/18~9/6)福井県立こども歴史文化館(10月上旬~11月中旬)を巡回の予定です.3.自然の造形美, Crystallographic art!展示した鉱物標本は,肉眼でも形状がわかりやすいものを優先し,鮮やかな色を示すものから選んでいます.これは,自然が示す幾何学的な不思議な造形美を,実物の標本で感じていただければ,との考えに基づいています.その点,系統分類を網羅する図鑑的展示にはならない短所もありましたが,北川先生の遺志に適った内容になっていれば,と念じております.また,来館者の注意が文字情報ではなく,標本自体に向くように,多くの会場で展示に工夫していただけたことに,大変ありがたく,感謝をしております.おかげで,インターネットや書籍などに掲載された写真ではなく,実物の標本の結晶に,自然の造形美を,見たままに楽しんでいただけたのではないかと思います.北川教授は,結晶の成長の跡を調べ,どのように誕生し成長したのかを明らかにし,さらに,どのように変化するのか,そして,これらの原因は何であるのかといったことを研究されていました.今回の展示で感じた自然の造形美が,いつの日か,地球の成り立ちや私たちの棲む環境とも深くかかわっていることに,一人でも多く気づいていただければ,企画に携わった者としては大きな慶びです.黄鉄鉱の立方体自形結晶(スペイン産)標本番号0460358日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)