ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み図4MOA美術館との共催講演会図6西川が遺した1914年頃のノート(理化学研究所記念史料室提供)図5西川の撮影したX線写真(理化学研究所記念史料室提供)その後,サイエンスアゴラなど,さまざまな催し物が開催された.4.西川正治の科学遺産世界結晶年の日本における成果として,西川正治のデータとノートの発見が挙げられる.これは,理化学研究所記念史料室における,西川正治の1913年から1914年にかけて撮影された, 153枚のX線回折写真のデータ(図5)と結晶構造因子の計算式が書かれたオリジナルノート(図6)などの「結晶学遺産」ともいうべき貴重な史料の発見である.史料の中には, 1913年に蛙の筋肉の撮影に挑戦した写真もあった.何も写っていなかったが,このデータは,世界初の蛙の筋肉のX線回折実験が,イギリスのJ. D.Bernalの1920年代後半に行われたという定説を覆す新事実を示す証拠である.西川はBernalよりも10年以上も前に挑戦していたことが,この世界結晶年の取り組みで,明らかになった.5.国際支援世界結晶年では, IUCrの取り組みとしてオープンラボなど,アフリカ地域への結晶学の普及を行っている.わが国でも, 10月にSPring-8で開催されたアジア・オセアニア放射光スクール「ケイロンスクール」にユネスコ・IUCr図7ケイロンスクール2014アフリカからの学生達とIUCrからの講師達より推薦された3名のアフリカ人学生(アルジェリア,南アフリカ,カメルーン)を招待し,アジア・オセアニアの学生たちとの交流を行った(図7).6.世界結晶年記念講演会世界結晶年の日本委員会の取り組みを締めくくるイベントとして,世界結晶年IYCr2014記念講演会が, 2014年11月2日東京大学伊藤謝恩ホールで開催された.講演会は,結晶学会が主催する,専門家を対象とした午前の部に引き続き開催される形で,一般向けの午後の部として「結晶の美しい世界と,私たちの未来」と題して開催された.会議の様子については他稿にゆずる.ここでは,この記念講演会を企画した経緯について書き留めておく.企画に当たって,寺田寅彦,西川正治,中谷宇吉郎の結晶学のパイオニアとしての貢献と,それがわが国の現代の科学技術の先端性がどのように結びつき,そして,人類が抱える課題の解決に,今後,結晶学がどう貢献していくか354日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)