ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

特集:世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み日本結晶学会誌56,352-355(2014)日本における世界結晶年;IYCr2014理化学研究所放射光科学総合研究センター高田昌樹Masaki TAKATA: The Meaning of IYCr2014 in Japan ?Activities of Japan Initiative?1.日本委員会の結成2012年7月, 2014年を「世界結晶年」(International Yearof Crystallography:IYCr2014)に制定することが国際連合総会で決定された.その目的は,結晶学がこれまで人類の幸福に大きく貢献してきたことを認め,結晶学の発展が人類の科学技術の発展に大きく貢献することの理解を増進し,若い世代の結晶学への興味を喚起し,特にアフリカ,アジア,ラテンアメリカなどの開発途上国の熱意ある科学者の支援をすることにあった.日本は,日本学術会議化学委員会IUCr分科会(委員長:栗原和枝)が中心となり, IUCr元会長の大橋裕二,当時の結晶学会会長(2012~2013)であった坂田誠らの協力を得て,関連学協会の賛同のもと,文部科学省,外務省に働きかけ,国連でのIYCr2014の制定の議決に国として協力した.そして, 2014年,世界各国で,世界結晶年を祝うさまざまな記念行事が行われてきた.わが国も, 2013年9月16日に,日本委員会(委員長;飯島澄男,副委員長;大橋裕二,栗原和枝,坂田誠,三木邦夫)を結成し,実行委員会(委員長;高田昌樹,副委員長;菅原洋子,中川敦史,庶務幹事;井上豪)を組織し,活動を開始した.2.日本にとっての世界結晶年とは?世界結晶年は, 2014年をその年とした理由として,マックス・フォン・ラウエ「結晶によるX線回折現象の発見(1912年)」と, Bragg父子「X線による結晶構造解析に関する研究(1913年)」が1914年, 1915年のノーベル物理学賞を受賞し,近代結晶学が誕生してから100年となることを記念してとされている.世界各国で行われている記念行事も,それに因んで企画されているものがほとんどである.しかし,世界結晶年のわが国における位置づけを考えてみたとき,ほかの国とは意を異にする.それは,日本の結晶学が,寺田寅彦,西川正治,仁田勇,中谷宇吉郎,菊池正士,篠原健一,三宅静雄,上田良二,加藤範夫らの俊英たちが魁となり,独自の100年の歴史を有し,近代結晶学の礎を欧米とともに築いたからである.そして,結晶学のフロンティアが,鉄鋼,半導体,エレクトロニクス,自動車,化学工業,繊維,製薬,光学機器,鉱業などのさまざまな産業を創出する技術の科学的基盤となり,科学技術立国としてのわが国の世界的な地位を今でも支えている.しかし,近年,科学技術の分野の多様化が進み,この輝かしい日本の結晶学の発展の歴史と重要性が顧みられないようになり,大学の講義名や講座名からも,次々と「結晶学」もしくは「結晶」という文字が消えていった.現在では,「結晶学」という基礎学理の次世代への継承も,危うくなってきている.その一方で,わが国の「結晶学」の発展の成果ともいえる, SPring-8, SACLA, J-PARCなどの大型研究施設や,球面収差補正電子顕微鏡,電子顕微鏡CTの開発は,技術力と研究成果の先進性において世界を凌駕するものとなっている.実行委員会は,日本の結晶学の100年の歴史を,その社会貢献とともに次の100年に継承することを活動のprincipleとした.そして,そのことを広く伝えるために,独自の世界結晶年のパンフレットを,実行委員会の松村浩由(大阪大学)が中心となり,井上豪(大阪大学),栗栖源嗣(大阪大学)らとともに企画・作成した(図1).図を見てわかるように,パンフレットは,「結晶学の歴史的な発展と,そのことが私たちの生活とどうかかわっているか」を一般の人に伝えるための絵本,というコンセプトで制作されている.表紙のデザインは,中谷宇吉郎先生の次女の中谷芙二子先生から提供いただいた雪の結晶の図1世界結晶年日本委員会パンフレット「結晶」352日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)