ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

平成26年度日本結晶学会賞受賞者平成26年度第2回評議員会において,三木会長より,平成26年度日本結晶学会賞選考委員会(月原冨武委員長)の答申および選考理由の説明がなされ,慎重に審議の結果,以下の4名の学会賞受賞が承認された.西川賞田中勲会員(北海道大学大学院先端生命科学研究院・特任教授)「タンパク質結晶学方法論の開発と遺伝子翻訳・発現に関わるタンパク質の構造研究」学術賞千田俊哉会員(高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所・教授)「エピジェネティックおよび疾病関連タンパク質の構造生物学研究」進歩賞西増弘志会員(東京大学大学院理学系研究科・助教)「巨大なリボヌクレオ複合体および二機能性酵素の結晶構造解析」藤井孝太郎会員(東京工業大学大学院理工学研究科・助教)「未知構造解析を用いた有機結晶の反応機構の解明および酸化物イオン伝導性無機結晶の新物質探索」受賞理由日本結晶学会賞西川賞「タンパク質結晶学方法論の開発と遺伝子翻訳・発現に関わるタンパク質の構造研究」田中勲会員(北海道大学大学院先端生命科学研究院・特任教授)田中勲会員は,タンパク質結晶学の方法論の開発と構造生物学研究の両方を推進するグループを率いて,構造生物学分野に重要な貢献を果たしてきた.特に,位相問題解決に重要なイオウの単波長異常散乱法(S-SAD法)をはじめとする,異常散乱法による構造解析法の進歩に大きく寄与した. S-SAD法は,遺伝子工学的な修飾を何も施さない天然タンパク質の位相決定法として画期的であり,汎用的で迅速な構造解析法として大きな発展が期待されるものであるが,長波長のX線を利用するため吸収効果が大きな問題となる.田中会員は,吸収効果を低速した高精度でのデータ測定を可能にするために,結晶化母液を取り除くループレスマウント法を開発した.この技術は国家プロジェクト「創薬等支援技術基盤プラットフォーム」における支援技術の1つとして広く利用されるようになり,国際的な普及をみた.また,構造解析の迅速化や巨大タンパク質への適用が求められるようになったことを鑑み,それらを達成する方法の開発にも力を注ぎ,初期モデルから最終構造までのタンパク質分子構造精密化の過程を全自動で行うためのプログラムLAFIREを開発した.この技術は解析を迅速化させただけでなく,分子量1000万にも及ぶX線結晶構造解析で決定された最大の生体超分子複合体ボルトの構造解析を成功に導いた. LAFIREは,インターネットを通して全世界に向けて公開され,多くの研究者に利用されている. S-SAD法やLAFIREは,現代のタンパク質結晶学において,広範な利用者に利益を与える構造解析技術として国内外に広く認知され,タンパク質構造解析における技術的困難さを軽減することで,異分野の研究者にもこの方法利用への道を拓き,生物科学分野における汎用的に研究方法とすることに明確な貢献を果たした.これらの方法論に対して,田中会員とその研究グループは, AsCA2004でのPlenary Lecture, ACA, CCP4 Seminar/Workshop