ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

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概要

日本結晶学会誌Vol56No4

クリスタリット坂部カメラSakabe Camera坂部知平博士が考案した,シンクロトロン放射光用のX線カメラ(カセット)である.従来の有機・無機化合物結晶用のワイセンベルクカメラより半径(180/2πmm)が大きいのが特徴で,タンパク質結晶の単位格子に合わせて半径やかたちがいろいろなものが取り揃えてあった.例えば,非常に大きい単位格子の結晶に備えて(非常に回折点同士が接近している場合に備えて),半径が859 mm(180/2π×30 mm)という巨大なものまであった.ディテクターはイメージングプレート(IP)で,カセットに直接装着しX線回折データを記録した.通常40×20 cmの大きさのIPを用いたが,カセットの大きさに応じてIPの枚数を増やしたり, 80×40 cmの大きさのIPを用いたりした. IPに記録された回折強度などの情報はIPリーダーにかけて読み取り,その後白色光をあててIPを再生した.なお,沢山の層線(回折点)を一枚のIPにワイセンベルクモードで記録することもできたが,多くの人は振動写真モードで利用した.というのは,ワイセンベルクモードで測定するには結晶の軸立てが必要であり,また年を経るに従ってS/Nを上げることがますます重視され,振動写真モードで振動角を狭くして測定するのが主流になった.坂部カメラは日本の放射光施設において,タンパク質結晶の回折パターンを測定する標準装置となり,一世を風靡した.ところが, CCDが登場してIPが放射光施設で使われなくなると,坂部カメラは使われなくなった.(大阪大学大学院工学研究科福山恵一)286日本結晶学会誌第56巻第4号(2014)