ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

日本結晶学会誌56,281-282(2014)未来へ羽ばたけ!―若手研究者紹介―研究人生の3分の1大阪大学蛋白質研究所東浦彰史大阪大学蛋白質研究所の東浦彰史と申します.現在はSPring-8にある蛋白質研究所生体超分子構造解析ビームラインBL44XUにおいてビームラインの運営・維持・ユーザー対応などにかかわっております.また,ビームラインの仕事と並行して自分自身の研究テーマにも日々取り組んでいます.まずは若手研究者紹介ページに自身のことを書かせていただく機会をいただきましたことに心より感謝申し上げます.駆け出しの未熟者が自分自身のことを書くということはなかなかないことで気恥ずかしいばかりですが,これまでの研究の変遷などを思いつくままに書かせていただこうと思います.結晶学と出会ったのは学部4年生の研究室配属のときです.当時,蛋白研の教授をされていた月原冨武先生の研究室紹介で“大きなタンパク質の複合体を結晶にして原子レベルでその構造を明らかにする”という趣旨のお話をされ,詳しいことは理解できませんでしたが,そこにロマンを感じたことが始まりです.何も詳細はわからないまま当時の蛋白研の物理構造研究部門への配属を決めました.実際に配属されてみると,教授になられたばかりの中川敦史先生のところでお世話していただけることになり,そのときに見せていただいたイネ萎縮ウイルス(Rice DwarfVirus;RDV)の高い対称性を有した立体構造の美しさに魅せられ,まさかそれから10年以上もかかわり続けるとは想像だにしませんでしたが, RDVにかかわるテーマでの研究を始めることとなりました.学部4年生から博士前期課程にかけてRDVに関するテーマで研究を続けていました.毎年,筑波の中央農研でウイルス純化のために何十kgと稲刈りをしたことはとてもいい経験になりました.しかし,めぼしい結果を出すことができず,それを見かねた(?)中川先生から提示していただいたテーマが後の学位論文のテーマにもなった高分解能X線結晶構造解析に関するものでした.当初は蛋白研にも縁の深いタカアミラーゼを対象としていました.原子分解能を優に超える電子密度の美しさとX線結晶構造解析の理論に魅了されていったのもこの頃からではないでしょうか.自身が高分解能で決定したタカアミラーゼの構造が1980年代に角戸正夫先生の研究室で松浦良樹先生と楠木正巳先生が中心となって構造を決定されたものと大差がないことに驚かされたことを今も鮮明に覚えて日本結晶学会誌第56巻第4号(2014)2014年7月BL44XU実験ハッチにています.博士後期課程では主に高分解能のX線結晶構造解析の研究を行っていました.高分解能データの収集法がなかなか定まらず,放射光施設で何度も繰り返し実験を行っていました.この頃,放射光施設に通い詰めた経験が今にも活かされているのではないかと思います.やや年限をオーバーして学位を取得後, 1年ほど蛋白研でポスドク生活を送った後, SPring-8の蛋白研ビームラインに研究拠点を移し,特任助教として現在に至っております.ビームラインに移動してから約3年経ち,ようやく全体像が見えてきたように思います.当初はユーザーからビームラインを管理する側に立場が代わり,その違いと身につけなければいけないことの多さに大変戸惑いました.これまでユーザーとして,放射光施設で自分の実験が自由にできたのはビームラインスタッフの日々のメンテナンスがあってのものであるということを実感するに至りました.現在はユーザーの皆さんが何も意識することなく自分の実験ができる環境作りが何よりも重要であるという認識を第一に日々のユーザーサポートを行うように心がけています.学部4年生から始めた研究活動は“超分子複合体であるウイルスの構造解析”から“水素原子までをも観測できる超高分解能の構造解析”まで,大きいところから小さいところまで幅広く展開してきました.最近ではX線自由電子281