ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No4

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日本結晶学会誌Vol56No4

特集:生物研究における結晶学-生命現象の可視化への挑戦-日本結晶学会誌56,253-258(2014)ポンプ-プローブ法を用いた生体分子の構造ダイナミクス測定高エネルギー加速器研究機構富田文菜,野澤俊介,足立伸一ドイツ電子シンクロトロン佐藤篤志自治医科大学柴山修哉Ayana TOMITA, Tokushi SATO, Shunsuke NOZAWA, Naoya SHIBAYAMA andShin-ichi ADACHI: Structural Dynamics Measurements of the Biological Molecule UsingPump-Probe TechniqueToday, we can determine the structural basis of a biological molecule by X-ray crystallographyor X-ray solution scattering. However, static structures do not say a lot for the realtimetransition of the functional dynamics. Here we introduce the pump-probe method usingcombined single bunch X-ray from synchrotron source and pulsed laser system in sub nanosecondtime resolution. Time-resolved X-ray solution scattering measurement of dimerichemoglobin revealed a spiral motion of two subunits and three intermediate states. The pumpprobemethod is even powerful technique in the other methods of measurement for theprotein dynamics.1.はじめに生体中の機能分子について,分子構造変化の詳細をリアルタイムで観測することはいまだ容易ではないが,もしそれが観測できるようになれば,機能分子が生体内でどのような機構で役割を遂げているのかを明らかにすることができると期待される.本稿では,ポンプ-プローブX線溶液散乱法を用いた二量体ヘモグロビンの構造ダイナミクス研究を紹介するとともに,ポンプ-プローブX線単結晶構造解析の概要についても触れることにする.2.ポンプ-プローブ時間分解測定法パルスレーザーをポンプ光(励起光),パルス放射光X線をプローブ光(検出光)に用いたポンプ-プローブ時間分解測定法を紹介する.光照射などによって引き起こされる分子構造変化をともなう系において,ある時間領域での構造情報が含まれるシグナルを選択的に抜き出すことにより,分子構造のスナップショットを得ることができる.図1に示すように,ポンプ光とプローブ光の間に時間遅延を設け,それを任意のタイミングに合わせることにより,分子構造変化の初めから終わりまで観測したい時間スケールの構造変化を追うことが可能である.また,その反応が可逆反応であれば,遅延時間を固定して繰り返しプローブ信号を蓄積することも可能である.ここで,放射光のパルス性について触れておく.図2に放射光リングの運転モードの例を示した.蓄積リング中の日本結晶学会誌第56巻第4号(2014)図1図2ポンプ-プローブ測定の概念図.(Scheme of thePump-Probe measurement.)放射光リングの運転モード.(Run modes of thesynchrotron ring.)253